NTTレゾナントは3月16日、自社が運営するAI型ECサイト内検索ソリューション「goo Search Solution」の新機能である「ハッシュタグ機能」とEC最新トレンドに関するラウンドテーブルを実施した。

goo Search Solutionは、AIがユーザーの行動ログから自己学習し検索結果の最適化を行うAI型ECサイト内検索ソリューション。NTTレゾナントが提供しているポータルサイト「goo」の運営の中でノウハウを蓄積した検索の専門部門が「gooのAI」技術を用いて、ECサイト内検索の利便性を向上させるというツールだ。

ラウンドテーブルには、同社のシニアコンサルタントである北岡恵子氏が登壇し、コロナ禍3年目を迎え、変化するECサイトでの購買行動とそれに基づいて誕生した新機能の紹介を行った。

本稿ではその一部始終をレポートする。

今後のECサイトは「欲しいものを厳選して買う」時代に

初めに、北岡氏は2022年のEC業者を取り巻く環境の特徴として「物流費の上昇」「円安・物価高騰」「競争激化」を挙げた。

「ご存じの通り、新型コロナウイルスの流行や円安といった事象は、EC業界に大きな影響を与えました。『外出せずに買い物をしたい』『少しでも安いものを買いたい』という想いは多くの人をECサイトに導いています。実際にコロナ禍になってECサイトで買い物をする人が40%以上も増えたという調査もあり、ECサイト業界にとっては良い傾向にあると言えます。しかしその一方で、ECサイト増加に伴い競争が激化したという側面もあります」(北岡氏)

  • ECサイト業界の現状を語る北岡氏

NTTレゾナントが実施した調査では、「コロナ禍前よりもECサイトの利用が増えた」と回答している人が、「増えた」と「どちらかというと増えた」を合わせて41.8%も存在しており、また「コロナ禍中(1年前)と比べて現在のECサイトの利用が増えた」と回答している人も26.8%いることが分かっているという。

  • 【調査】あなたはコロナ禍前、また1年前(コロナ禍中)に比べてECサイトの利用が増えましたか 引用:NTTレゾナント

ECサイトでは、書籍や生活家電、食品、化粧品が特に多いとのことだが、反対にECサイトで購入しにくいジャンルとしては、工具・DIY部品やスポーツ用品、子ども関連の商品など「1度見てから買った方が良さそうな商品」が挙げられている。しかし、中には例外もある。

「サイズや使い心地などが重視される商品はECサイトでは避けられる傾向にありますが、その中で『ファッション・衣類』の分野は利用率がかなり高いことが分かっています。衣類などはサイズ感や質感など手に取って確かめることが重要視されるジャンルのような気がしますが、ECサイトにおける『ファッション・靴・アクセサリー』のカテゴリの年間購買金額で『5万円以上』と回答した人が27.4%と全体の3割近くいるという調査結果も出ており、ECサイト上で衣類を購入することが日常化している人も多いことが読み取れます」(北岡氏)

このようにECサイト上での購入に抵抗がなくなり、生活に溶け込んでいる現代だが、ECサイト内の購入は変化を迎えるフェーズに来ているという。それは物価上昇を受けて「購入の際に価格に厳しい目を持つ」ようになる、という変化だ。

実際に「物価上昇を受け、ECサイトでの購入において変化があると思いますか」と同社が調査したアンケートでは、多くの人が「より価格の比較を行うようになる」「欲しいものを厳選して買う」「セールになるまで買い控える」という回答をしている。

  • 【調査】物価上昇を受け、ECサイトでの購入において変化があると思いますか 引用:NTTレゾナント

これによって、元々コロナ禍でECサイトが増えて競争が激しくなっていたものが、「価格競争」という視点が加わることで、より競争が激化するのではないか、というのが同社の見解だ。

AIを活用することで新たな顧客体験を創造する

そんな競争が激化するECサイト業界に新たな価値を提供するべく、NTTレゾナントが着目したのは「ユーザーと商品の出会い方、出会わせ方」だ。

「あなたはECサイトで商品を探していて、目的の商品が見つからなかったことはありますか」という質問に対して、86.3%の人が「YES(目的の商品が見つからなかった)」と回答しており、本来であれば購入につながるはずだった顧客を取り逃がしてしまっている現状が明らかになっている。

  • 【調査】あなたはECサイトで商品を探していて、目的の商品が見つからなかったことはありますか 引用:NTTレゾナント

そんな顧客が確実に目当ての商品にたどり着くことができるようにしたのが、今回発表されたgoo Search Solutionの新機能「ハッシュタグ機能」だ。

「ハッシュタグ機能」は、商品情報をもとにAIがハッシュタグを自動生成する機能。商品の色やかたちなどの見た目要素だけでなく、機能面やイメージ、利用シーンなどの特徴やポイントを自動生成し、その特徴的なワードをハッシュタグとして抽出することで、ユーザーには思いつかないワードやシーンから、新しい切り口での出会いを創造する機能となっている。

ラウンドテーブルの最後を北岡氏は以下のように締めくくった。

「ECサイトにおいて不備や欠陥があった場合、その不具合を人間が気付ける範囲はすごく狭いと思っています。購入に至らなかった顧客の方のデータを収集するのは難しいからです。しかしAIを活用することで、今までは届けることができなかった少数派の方へのアプローチも可能になると考えています。AIを活用することで伸ばせる部分があるならば、積極的にECサイトにAIを活用していくべきではないでしょうか」(北岡氏)