千葉大学は3月28日、人間の認知機能に影響を及ぼしうる室内環境データを取得するセンサネットワークシステム、およびそれらの環境データと時間情報から、その環境内にいる人間の心の状態(情動状態)を推定するシステムを開発し、環境データのみを用いてその環境にいる人の4種類の情動状態(ストレス度・覚醒度・疲労度・快適度)を、90%の精度で推定することに成功したと発表した。
同成果は、千葉大大学院 融合理工学府の紅林勲大学院生、同・大学 統合情報センターの小室信喜准教授、同・大学院 工学研究院の平井経太准教授、同・関屋大雄教授、同・大学院 人文科学研究院の一川誠教授(山口大学 時間学研究所 客員教授兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、IoTおよびサイバー・フィジカル・ヒューマン・システムの分野を扱う学術誌「Internet of Things」に掲載された。
学習・労働の作業効率化、人為的作業ミスの軽減、そしてメンタルヘルス管理の方策として、ストレスや疲労感、快適感、感情的覚醒度といった人間の情動状態の把握と環境改善が重要と考えられている。心理学や認知科学で用いられてきた実験データやアンケートなどの手法で得られた情動状態の把握は、心理特性の主観的な解明には効果的だが、客観的に解明するには不向きだという。その一方で、体温や心拍数などの生体データと心理指標、情動状態との対応を解析する研究は、客観的かつ高精度で情動状態を推定可能だが、人体に取り付ける接触型センサを用いるため、一般社会に浸透させるのは難しい。
これまで研究チームは、客観的かつ非侵襲的な手法で情動状態を推定するシステムを開発済みで、80%以上の精度で情動状態を推定することには成功していた。しかし、実用化に向けてさらなる精度向上が求められていたという。そこで今回の研究では、非接触型環境センサデータのみを用いて人間の情動状態を高精度で推定するシステムを開発することにしたとする。