讃岐うどん専門店「丸亀製麺」をはじめ約20の飲食店ブランドを有するトリドールホールディングス(以下、トリドールHD)は、グローバルフードカンパニーを目指し、その中長期経営計画ではDXの推進を掲げている。2月22日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 DX Frontline for Leaders 変革の道標」に登壇した同社 執行役員 兼 CIO 兼 CTOの磯村康典氏は、「トリドールホールディングスのDX」と題した特別講演で、トリドールHDが進めているDXの内容について詳しく解説した。

「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 DX Frontline for Leaders 変革の道標」その他の講演レポートはこちら

全てのレガシーシステムを廃止する、トリドールHDのDX戦略

磯村氏はまず、トリドールHDの中長期経営計画の中にDX推進が含まれており、「経営戦略の一環としてDXを進めている」ことを明示した。同社のDX戦略として2020年に公表したのが「トリドールDXビジョン2022」だが、これはレガシーシステムを廃止するためのトランスフォーメーションが主となっている。具体的には、全てのレガシーシステムを廃止し、クラウドとサブスクリプションを組み合わせた業務システムに移行。ネットワークについてはゼロトラストセキュリティを実現するというものだ。また、コールセンターや経理などの定型業務は全て手順化し、BPOセンターへ集約することも目指す。

  • トリドールDXビジョン2022

さらに、これまで進めてきたDX推進プロジェクトのミッションやビジョンなどを整理し、2022年11月に公表したのが「DXビジョン2028」である。ここで目指しているものとして磯村氏は、AIによる需要予測を使ってシフト作成や発注計画を自動化する「店舗マネジメント業務の自動化」を挙げた。この他に、CRMやCMSといった「デジタルマーケティングプラットフォームの構築」、従業員のリスキリングをはじめとする「教育マネジメントシステムの構築」、AIによる需要予測を取り入れた「エネルギーマネジメントシステムの構築」といったテーマも掲げられている。

  • トリドールDXビジョン2028

財務諸表への影響が小さければ、DX推進に対する経営層の合意を得やすくなる

磯村氏は次に、同社のここまでのDXの大まかな流れについて説明した。2019年の時点では、従業員にはIT部門と業務システムに対する不満があり、経営陣には老朽化したシステムが成長戦略の足かせになるのではという危機感があったという。そこでデジタル基盤再整備が急務となり、CIOに任命された磯村氏は現状のヒアリングから取り掛かった。併せて累計のIT投資額や残存簿価のほか、IT費用の実態調査といった財務調査、初期費用やランニングコストといったDX費用を算出してDXの効果をイメージできるようにした。こうして完成したITロードマップには、「全システムをリプレイスすること」「売上高IT費率が増えないこと」、そして「BS(貸借対照表)上の固定資産(ハードウエア、ソフトウエア)が増えないこと」という3つの骨子があると同氏は説明する。

「PL(損益計算書)上への影響が軽減されて、BSに影響が無ければ、DX推進を推進しやすくなります」(磯村氏)

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