スノーフレイクはこのほど、データをリアルタイムで共有・売買できる「Snowflakeマーケットプレイス」に関する技術説明会を開催した。同社はデータクラウド「Snowflake」を提供しているが、企業によるデータ共有を促進するため、「Snowflakeマーケットプレイス」の拡大に注力している。
説明会では、新機能「Unistore」「Hybrid Tables」やネイティブアプリケーションフレームワークを活用して、「Snowflakeマーケットプレイス」で展開されているTangerineとTruestarのサービスが紹介された。
「Snowflakeマーケットプレイス」でデータによる収益獲得を
初めに、Snowflake シニアプロダクトマネージャー兼エバンジェリストのKT氏が、Snowflake マーケットプレイスについて説明を行った。KT氏は、同社が提供するデータクラウドについて、「プラットフォームと、データ、サービス、アプリケーションが一体となってグローバルネットワークになり、そこでは、シングルプラットフォームで最も関連性の高いコンテンツにつながることができる。その中核となるコンセプトがマーケットプレイス」と説明した。
スノーフレイクでは、データクラウドを活用して企業がさまざまな企業とデータコラボレーションすることを促し、さらに、マーケットプレイスで自社のデータを販売することで、収益化することを目指している。
KT氏は、データコラボレーションを支えているテクノロジーとして、Snowgridを紹介した。FTPやAPIなどを用いた従来のデータ共有においては、「データを相手に転送する」「データを移動した後に安全性が確保されない」「データのアクセスに時間がかかる」などの課題があった。
これに対し、Snowflakeでは、ETLやコピーを使用せず、プライバシーが確保された形で、相手のリソースを用いて自分たちのデータを見せることができる。
リアルタイムで分析データの提供を実現:Tangerine
続いて、Tangerineの取締役 COOを務める島田崇史氏がSnowflake マーケットプレイスの活用事例を紹介した。同社は今年10月から、Snowflake マーケットプレイスに来店分析・顧客エンゲージメントプラットフォーム「Store360」が保有するデータを公開開始した。
「Store360」は、商圏内における滞在顧客の把握をはじめ、来店店内・回遊など館内の顧客行動を把握するための店前流量や来館者数の分析、各フロアーへの立ち寄り率、最終的に購買に至るレジ通過客数など、高品質な顧客体験を前提としたデータを取得できる。
「Store360」のデータ分析でSnowflakeが利用されている。島田氏は「IoTセンサーによってデータのフォーマットが異なり、複数のIoTセンサーのデータを分析する環境を事業会社単独で構築することは難しい。Snowflakeがあれば、複数のIoTセンサーのデータと人流データ、POSデータを組み合わせたプロジェクトを簡単に実現できる」と説明した。
さらに、島田氏は、リアルタイムにその場にいる人を確認して最適なコンテンツを配信するために、Snowflakeの新機能「Unistore」を使っていることを紹介した。トランザクションを処理する専用データベースが必要だったため、リアルタイムによるコンテンツ配信が実現できなかったのだという。
「Unistore」を使えば、単一のプラットフォームでトランザクションデータの処理とデータ分析を実行することが可能になる。
Unistoreとは、トランザクションデータと分析データを一つの場所にまとめたワークロードのことであり、Hybrid Tablesとテーブルによって実現されている。KT氏によると、Hybrid Tablesでは、Unistoreで利用しているRow StorageとSnowflakeで利用しているColumnar Storageがレプリケートしているのだという。
UnistoreとHybrid Tablesは現在、プライベートプレビュー中で、一般公開はされていない。
無料でデータ加工アプリを提供:Truestar
次は、Truestar 代表取締役社長の藤俊久仁氏が、Snowflakeマーケットプレイス上でオープンデータを提供するサービス「Prepper Open Data Bank」について説明した。
同サービスは、国勢調査や国土数値情報、気象情報などのオープンデータをすぐに分析できるような形で共有しているもの。分析アプリケーションから同サービスにアクセスして、分析を行う形となる。
通常、オープンデータを利用するとなると、自分でデータを収集して、加工する必要があるが、同サービスを使えばその手間が省ける。藤氏は、同サービスの特徴として、「無料」「営利目的でも利用可能」「クラウド上でデータを一元管理」の3点を挙げた。
そして、Truestarは次のサービスとして、データ加工アプリ「Prepper Apps」の開発に取り組んでいる。同サービスは、「Snowflake Native APPs」を用いて提供される。
APIでアプリケーションの連携を行う際、ユーザーはサービスプロバイダーにデータを提供する必要がある。しかし、データのやり取り、運用には当然コストがかかるため、ビッグデータの連携には適していない。
これに対し、「Snowflake Native APPs」は、ユーザーが自社のデータを外に出さずに外部のデータやソリューションと簡単に連携することを可能にする。
サービスプロバイダー側は、共有データのためのインフラ、データ自体の管理を行う必要がない。また、ユーザー側は自社のデータを外部に送る必要がなくなり、処理能力もコントロールできる。
「Prepper Apps」の第1弾として試作されているのが「逆ジオコーディングアプリ」だ。同アプリでは、ユーザーが緯度経度を送信すると、それに住所をひもづけて送信してくれる。
「Prepper Open Data Bank」と同様、「逆ジオコーディングアプリ」も無料で提供される。藤氏によると、例えば、競合に当たる「Google Maps Geocoding API」の月間100万リクエストの料金は3400ドルだという。
同アプリを無料で提供する背景について、藤氏は次のように語っていた。
「オープンデータをベースにしているため、有償のサービスに比べると精度と粒度は劣るところがある。しかし、分析で使うには十分な機能だと思っている。大量に生成されるGPSログなどはコストが大きくなるため、データ分析での利活用が進まない。そうした状況を解消するため、逆ジオコーディングアプリを無料で提供し、データの民主化を実現したい。誰か1人がやればいい仕事を多くの分析者が行っており、疲弊している。これは日本の損失とも言える。皆が楽しく働ける社会にしたいと願っている」