北海道大学(北大)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、慶應義塾大学(慶大)、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ、九州大学(九大)、東京大学(東大)の6者は3月22日、小惑星リュウグウの粒子から、すべての地球生命のRNAに含まれる核酸塩基「ウラシル」の検出に成功したことを共同で発表した。

さらに、同一サンプルから、生命の代謝に関する重要な補酵素の1つである「ビタミンB3(ナイアシンまたはニコチン酸)」を検出したことも併せて発表された。

  • はやぶさ2がリュウグウでウラシルとビタミンを含むサンプルを採取するイメージ(c)NASA Goddard/JAXA/Dan Gallagher

    はやぶさ2がリュウグウでウラシルとビタミンを含むサンプルを採取するイメージ(c)NASA Goddard/JAXA/Dan Gallagher(出所:北大プレスリリースPDF)

同成果は、北大 低温科学研究所の大場康弘准教授、JAMSTECの高野淑識上席研究員(慶大 先端生命科学研究所 特任准教授兼任)、九大大学院 理学研究院の奈良岡浩教授らの国際共同研究チーム「可溶性有機分子分析チーム」(「はやぶさ2初期分析チーム」の6つのサブチームの1つ)によるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

可溶性有機分子分析チームはこれまでの研究で、リュウグウ試料の軽元素(水素・炭素・窒素・酸素・硫黄)組成やその安定同位体比、さらにアミノ酸やカルボン酸、有機アミンなど、同試料に固有の有機化合物の存在を明らかにしてきた。今回の研究では、リュウグウ試料における「窒素複素環化合物」に焦点を当て、研究チームが独自開発した超高感度・高精度分析手法を用いて、その分布を検証したという。

まず、リュウグウの最表層から採取された試料「A0106」と、地表下の領域に由来する試料「C0107」の合計約10mgから熱水抽出物を獲得した後、それの酸加水分解が施された。そして、極微量試料分析用に最適化した高速液体クロマトグラフィー/電子スプレーイオン化/超高分解能質量分析法を駆使して、同加水分解物中の核酸塩基など、窒素複素環化合物の分析が行われた。また、精密分析の確度保証を行うため、キャピラリー電気泳動/超高分解能質量分析法による交差検証も実施された。さらに、同じリュウグウ試料のメタノール抽出物を分析し、窒素複素環化合物のアルキル同族体の分布も調べられた。

  • (左上)電子スプレーイオン化/超高分解能質量分析法による精密解析を進めるクリーンルームの様子。(右上)極微量試料分析用に最適化した多段的溶媒抽出の様子。(下)今回の研究でリュウグウでの存在が確定された主な窒素複素環化合物の構造

    (左上)電子スプレーイオン化/超高分解能質量分析法による精密解析を進めるクリーンルームの様子。(右上)極微量試料分析用に最適化した多段的溶媒抽出の様子。(下)今回の研究でリュウグウでの存在が確定された主な窒素複素環化合物の構造(出所:北大プレスリリースPDF)

今回独自開発された分析法では、サンプルに含まれる1ピコグラムオーダー(物質量換算でフェムトモルオーダー)の窒素複素環化合物を検出・同定し、定量的な濃度の評価が可能な性能を有するという。