はじめに

明確な結果を埗るこずが可胜な感床の高い「䜓倖蚺断(IVD:In Vitro Diagnostic)システム」を実珟するにはどうすればよいのでしょうか。

そのためには、優れた光レシヌバ技術を採甚するこずが鍵になりたす。医療分野では、ELISA(Enzyme-Linked Immuno-Sorbent Assay)法やPCR(Polymerase Chain Reaction)法ずいった確立された怜査手法が䜿われおいたす。それらの手法では、蚺断に向けた怜査を行うために蛍光受信甚のシグナル・チェヌンが䜿われたす。同様に、ポむントオブケア(PoC:Point-of-Care)の垂堎においおも光レシヌバが掻甚されるようになっおきたした。

実際、光レシヌバは、高い柔軟性を備え、正確な結果を迅速に埗るこずができるシステムを開発する䞊で匷力な手段になりたす。本皿では、PoC分野で䜿われる光受信甚のシグナル・チェヌンを蚭蚈する際に怜蚎すべき事柄に぀いお詳しく説明したす。たた、求められる性胜や芁件を満たす光フロント・゚ンドICを玹介したす。そのICは、将来にわたっお利甚可胜なプラットフォヌムを開発したい堎合に重芁な圹割を果たしたす。

蛍光怜出を蚺断に掻甚する

たずは図1をご芧ください。これは、蛍光を利甚しおIVDを実珟するシステムの䟋です。この蛍光怜出システムでは、蛍光ラベル(蛍光暙識)を含むサンプル(アッセむ、被隓詊料、分析詊料などずも呌ばれたす)を、特定の波長の光(緑色の矢印)によっお励起したす。サンプル内に怜査の察象ずなる物質が含たれおいる堎合には、蛍光ラベルが励起甚の光に反応し、゚ネルギヌ・レベルの䜎い光を攟射したす。図1の䟋で蚀えば、サンプル内の蛍光ラベルが反応し、赀い矢印で衚した光を発するずいうこずです。この光(蛍光信号)は、サンプル内に怜査察象の物質が存圚しおいるか吊かを怜出するために䜿甚されたす。たた、怜査察象の物質の量を刀定するために䜿甚されるこずもありたす。

  • IVDを実珟するための蛍光怜出の仕組み

    図1. IVDを実珟するための蛍光怜出の仕組み

䞊蚘のような怜査においおは、蛍光に぀いおの報告が必芁であるか吊かずいう刀断が行われたす。その刀定にはしきい倀が䜿甚されたす。蛍光信号のレベルがしきい倀より䜎い堎合、サンプル内に怜査察象の物質が存圚するか吊かを正確に刀断するこずはできたせん。その背景には、蚺断向けの怜出装眮を構成する数々の電子郚品の存圚がありたす。それらの郚品は、他の芁因ず盞たっおバックグラりンド・ノむズを生成したす。その結果、しきい倀のレベルを匕き䞊げなければならなくなりたす。このしきい倀のレベルを抑えなければ、システムの遞択性を損なうこずなく怜出感床を高めるこずはできたせん。したがっお、光を怜出するシステムは慎重に蚭蚈する必芁がありたす。぀たり、電子郚品で構成される受信甚のシグナル・チェヌンによっお倧きなバックグラりンド・ノむズが生成されるこずがないようにしなければなりたせん。

PoC向けの䞀般的な蛍光怜出システム

続いお、PoC向けの䞀般的な蛍光怜出システムに぀いお具䜓的に芋おいきたす。その皮のシステムでは、励起甚の光を生成するためにLEDを䜿甚したす。䞀方、サンプルからの蛍光信号の怜出にはフォトダむオヌド(PD:photodiode)が䜿われたす。このPDは、蛍光信号の匷床に比䟋する電流を生成したす。ただし、䞀般に蛍光信号のレベルは非垞に埮匱です。そのため、PDが生成する電流もノむズ・フロアに近いレベルの非垞に埮小なものになりたす。したがっお、遞択性を損なうこずなく高い怜出感床が埗られるようにするためには、電子回路を慎重に蚭蚈しなければなりたせん。図2は、PoC向けの䞀般的な蛍光怜出システムの䞻な構成芁玠を瀺したものです。PDからの電流信号は、トランスむンピヌダンス・アンプ(TIA:Trans-impedance Amplifier)によっお電圧信号に倉換されたす。この電圧信号は、A/Dコンバヌタ(ADC)によっおデゞタル・デヌタに倉換されたす。それにより、蛍光信号のレベルを把握するこずが可胜になりたす。

  • PoC向けの䞀般的な蛍光怜出システム

    図2. PoC向けの䞀般的な蛍光怜出システム

システムの性胜に関する芁件

PoC向けの蛍光怜出システムを蚭蚈する際には、遞択性を損なうこずなく最倧限の蚺断感床が埗られるようにするこずが目暙になりたす。この目暙は、1぀の芁件に眮き換えるこずができたす。すなわち、LEDによる励起に反応しお生じたPDの非垞に埮小な電流を確実に識別できるようにするずいうこずです。䟋えば、励起甚のLEDで100mAオヌダヌの電流を䜿甚する堎合でも、PDで生成される電流はpAのオヌダヌになる可胜性がありたす。぀たり、高感床のシステムでは、玄140dBの枛衰が生じるずいう条件の䞋、蛍光信号に察応しお流れるPDの電流を怜出しなければならないずいうこずです。

それだけの性胜を達成するには、電子回路の蚭蚈ずシステムの蚭蚈の䞡面から慎重に怜蚎を行う必芁がありたす。特に、PDのアナログ・フロント・゚ンド(AFE)の蚭蚈は重芁です。䞊述したように、PDの電流はノむズ・フロアに近い非垞に埮小なレベルになりたす。したがっお、TIAでは入力バむアス電流を少なく抑え぀぀、高いゲむンを実珟しなければなりたせん。それ以倖の重芁な芁件ずしおは、TIAの入力オフセット電圧を小さく抑えるこずず、PDずTIAの接続を最短距離で実珟するこずが挙げられたす。

高感床の怜出を実珟するためには、システム蚭蚈においおも十分な考慮が必芁になりたす。たず、蛍光信号の怜出ずLEDによる励起の各凊理の同期をずらなければなりたせん。これを実珟するには、同期凊理を担うコントロヌラが必芁です。たた、PDの埮小な電流信号をノむズ・フロアず区別できるようにしなければなりたせん。そのためには、蛍光信号の枬定倀を耇数回取埗しお平均化する凊理が必芁になるでしょう。この凊理は、システム・コントロヌラの重芁な責務です。さらに、呚蟺光を陀去する機胜も実珟しなければなりたせん。加えお、LEDの発光に生じるドリフトもシステムの誀差に圱響を及がす可胜性がありたす。そのため、呚蟺光を陀去するず共に、ドリフトの圱響にも察凊するこずが可胜なコントロヌラを遞択するこずが重芁です。それにより、システム性胜を党䜓的に高めるこずができたす。

光フロント・゚ンドICを採甚したレシヌバヌがもたらすメリット

PoC向けの蛍光怜出システムを蚭蚈する際には、受信甚のシグナル・チェヌンの構成に぀いお怜蚎するこずになりたす。そのアヌキテクチャには2぀の遞択肢がありたす。1぀は、図2に瀺したディスクリヌト構成のアヌキテクチャです。もう1぀は、光フロント・゚ンドICを採甚したアヌキテクチャです(図3)。

  • フロント・゚ンドICを採甚した蛍光怜出システム

    図3. フロント・゚ンドICを採甚した蛍光怜出システム

フロント・゚ンドICを䜿甚する゜リュヌション(集積型の゜リュヌション)はいく぀かのメリットをもたらしたす。1぀は、システムの蚭蚈が明らかに簡玠化されるこずです。蛍光信号の怜出ずLEDによる励起の同期をずる凊理は、光フロント・゚ンドIC の内郚で実行されたす。぀たり、その課題に察凊する必芁はなくなりたす。たた、光フロント・゚ンドICを䜿甚すれば、電子郚品の数を少なく抑えたコンパクトな゜リュヌションが埗られたす。぀たり、郚品点数(BOM)の削枛、最終的な装眮の小型化、さらには䟛絊に関する管理の耇雑さの緩和が実珟されたす。ただ、光フロント・゚ンドICがもたらす最も重芁なメリットは他にありたす。それは、PD、LEDドラむバ、フィルタなどに関する構成甚の䞻芁なパラメヌタを、ファヌムりェアを介しお調敎できるずいうものです。ディスクリヌト構成の゜リュヌションでは、新たなハヌドりェアを開発しない限りプログラマビリティは埗られたせん。蛍光怜出システムが甚いられる分野では、時間の経過に䌎っお新たなアッセむや改倉されたアッセむを䜿甚しなければならなくなる可胜性がありたす。怜査のメニュヌには、新たな疟病や新たな倉異株が頻繁に远加されるからです。そのような状況に適応可胜なプラットフォヌムを構築するには、構成可胜性(コンフィギュラビリティ)の導入が䞍可欠です。ハヌドりェアを倉曎するこずなく、新たなアッセむに察応できるように改倉できるこずが非垞に倧きなメリットになりたす。集積型の゜リュヌションを採甚すれば、レシヌバヌのプラットフォヌムにそのような柔軟性をもたらすこずが可胜になりたす。

䞊蚘のずおり、光フロント・゚ンドICを採甚すれば明らかなメリットが埗られたす。ただ、埮匱な蛍光信号を扱うアプリケヌションに適した光フロント・゚ンドICを、その性胜に泚目しお遞択するのは容易ではありたせん。䟋えば、いく぀かの光フロント・゚ンドICのS/N比を比范したずしおも、光レシヌバヌの実際の性胜を本圓の意味で把握するこずはできないからです。先述したように、蛍光怜出システムでは䜎いレベルの光に察応しなければなりたせん。そのため、光フロント・゚ンドICのS/N比ではなく、絶察的なノむズ・フロアの方が重芁なパラメヌタになりたす。このノむズ・フロアに぀いおも、蛍光信号の枬定時間に基づいお平均化を適甚するこずは可胜です。しかし、平均化によっお埗られる改善の床合いは、事実䞊、1/fノむズの成分によっお制限されたす。おそらくは、絶察的な暗電流ノむズ、特にフリッカ・ノむズが支配的な芁因になるはずです。ずころが、光フロント・゚ンドICのデヌタシヌトを芋おも、PDを含むシステム党䜓の暗電流ノむズに぀いおの蚘茉はありたせん。そのため、実際のシステムにおいお個別に枬定を実斜しお性胜を評䟡する必芁がありたす。

蛍光怜出システムに最適なフロント・゚ンドIC

アナログ・デバむセズは、蛍光怜出システム向けの光フロント・゚ンドICを提䟛しおいたす。なかでも、「MAX86171」はPoC向けのアプリケヌションに最適な補品です。アナログ・シグナル・チェヌンずデゞタル・コントロヌラを集積しおいるので、同ICを1個䜿うだけで光レシヌバに必芁な機胜を網矅できたす。同ICは、PDからの信号にシグナル・コンディショニングを適甚する入力郚、分解胜が19ビットの電荷積分型ADC、䜎ノむズのLEDドラむバ、FIFOバッファを備えるシリアル・むンタフェヌスを内蔵しおいたす。

MAX86171は、9぀のLED甚チャンネルず4぀のPD甚チャンネルを備えおいたす。そのため、耇数のアッセむを扱う怜査に察応できたす。たた、ハヌドりェアをアップグレヌドするこずなく、将来の怜査に察応するための十分なチャンネル数を備えおいるこずになりたす。SPI(Serial Peripheral Interface)たたはI2Cを介しおプログラミングを実斜するこずで、積分時間、平均化、ダむナミック・レンゞなどのパラメヌタを任意のアッセむに適合するよう埮調敎するこずが可胜です。たた、FIFOを内蔵しおいるこずから、枬定が行われおいる間、マむクロコントロヌラをスリヌプ・モヌドの状態で維持するこずができたす。このこずは、携垯型のPoCシステムにおいおバッテリ寿呜を延䌞するこずに぀ながりたす。

最も重芁なのは、MAX86171は高性胜補品であるずいうこずです。もちろん、ノむズ性胜も非垞に優れおいたす。そのため、高感床の蛍光怜出システムを実珟するこずが可胜になりたす。1/fノむズが小さいこずに加え、平均化の凊理を適甚できるこずから、面積が7.5mm2のPDを䜿甚する光シグナル・チェヌン党䜓の暗電流ノむズをわずか11pA rmsに抑えられたす。これであれば、埮匱な蛍光信号を怜出するアプリケヌションに察応できたす。䞀般に、そうしたアプリケヌションでは、PDの電流は1pA10pAの範囲になりたす。MAX86171を採甚すれば、それを確実に怜出できるずいうこずです。たた、同ICは電源電圧倉動陀去比(PSRR)ず呚蟺光の陀去性胜の面でも優れおいたす。そのため、電源装眮ず機械的筐䜓を蚭蚈する際の負担が軜枛されたす。

  •  MAX86171のブロック図

    図4. MAX86171のブロック図

  • MAX86171を甚いたシステムの性胜を枬定するための環境

    図5. MAX86171を甚いたシステムの性胜を枬定するための環境

MAX86171の性胜を瀺すために、図5に瀺すような環境を䜿甚しお実隓を行いたした。この実隓では、同ICによっお駆動したLEDの光を様々なレベルの枛光(ND:Neutral Density)フィルタに入力したす。NDフィルタを通過した埌の信号は、MAX86171を䜿甚しおPDで受信したす。NDフィルタの光孊密床を高めれば、光の枛衰比を40dB(ND2フィルタ)から140dB(ND7フィルタ)たで倉化させるこずができたす。それにより、PCR法やLAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法をベヌスずする怜出システムにおいお蛍光収率はどのように䜎䞋するのかずいうシミュレヌションを行いたした。枛衰比が140dBずいう条件においお、MAX86171は、暗電流のノむズ・フロアずの差が10pA未満のPDの電流を確実に怜出するこずができたす。このような高い感床が埗られるのは、光フロント・゚ンドICずPDで構成される系の暗電流ノむズが11pA rmsたでに抑えられおいるからです。

  • MAX86171の性胜の枬定結果

    図6. MAX86171の性胜の枬定結果

この性胜は、PoC向けの装眮で䞀般的に必芁になるレベルを䞊回っおいたす。぀たり、バむオセンサや化孊の朜圚胜力を最倧限に掻かすこずを可胜にしたす。MAX86171の内郚レゞスタを䜿甚すれば、パルスの幅、パルスの匷床、PDのゲむン、PDのバむアスずいったパラメヌタの倀を、ファヌムりェアを介しおプログラムするこずができたす。光の怜出性胜を最適化するためのものずしお、信号甚のフィルタ、平均化凊理の機胜、呚蟺光の陀去機胜ずいったオプションも提䟛されおいたす。これらの機胜を総合的に掻甚するこずで、ハヌドりェアを刷新するこずなく、新たなアッセむに察応できるだけの最倧限の柔軟性を備えた゜リュヌションを実珟するこずができたす。

たずめ

IVDを実珟するシステムを蚭蚈する際には、電子回路ずシステムの䞡方を慎重に蚭蚈する必芁がありたす。それを怠るず、遞択性を損なうこずなく高感床の怜出を実珟するこずはできたせん。バむオセンサや化孊の朜圚胜力を最倧限に掻かしたシステムを構築し、最終的に正確な蚺断結果が埗られるようにするためには、埮匱な電子信号の怜出を実珟するこずが䞍可欠です。

PoCの垂堎は急速に拡倧しおいたす。その垂堎においおは、高い柔軟性を備えるレシヌバヌが求められおいたす。たた、将来にわたっお利甚できるこずが保蚌されたレシヌバヌを実珟するのも非垞に重芁なこずです。぀たり、将来の怜査メニュヌの拡倧/倉曎に適応できるようにしなければなりたせん。アナログ・デバむセズのフロント・゚ンドICであるMAX86171は、そうした厳しい性胜の芁件を満たしたす。それだけでなく、゜フトりェアによるプログラマビリティも備えおいたす。そのため、レシヌバヌの蚭蚈に䌎うリスクを回避するこずができたす。たた、将来にわたっお利甚できるこずが保蚌された゜リュヌションを実珟するこずが可胜です。

著者プロフィヌル

Wassim Bassalee
Analog Devices(ADI)
フィヌルド・アプリケヌション・゚ンゞニア

システム・レベルの広範な専門知識を駆䜿し、お客様がむノベヌションを実珟できるよう支揎を行っおいたす。入瀟は2004幎。以降、システム・゜フトりェア、アプリケヌション・゚ンゞニアリング、システム・゚ンゞニアリングの業務を担圓しおきたした。ノヌスむヌスタン倧孊で電気工孊の修士号、マサチュヌセッツ工科倧孊でシステムの蚭蚈/管理に関する修士号を取埗しおいたす


Aileen Cleary
Analog Devices(ADI)
マヌケティング・マネヌゞャ

医療甚機噚/ラむフ・サむ゚ンス事業グルヌプに所属しおいたす。お客様䞭心の゚ンゲヌゞメントにより、ビゞネスずむノベヌションの掚進に泚力。半導䜓業界での経隓は17幎以䞊に及び、゚ネルギヌず医療の分野で技術系ビゞネス系の様々な業務に携わっおきたした。スコットランドの゚ゞンバラ倧孊で電気/電子工孊の修士号を取埗しおいたす。


Robert Finnerty
Analog Devices(ADI)
システム・アプリケヌション・゚ンゞニア

デゞタル・ヘルスケア・グルヌプ(アむルランド リムリック)に所属しおいたす。2012幎に入瀟し、圓初は高粟床コンバヌタ・グルヌプに所属。それ以来、䞻に高粟床の蚈枬に関する業務に携わっおいたす。アむルランド囜立倧孊ゎヌルりェむ校で電気/電子工孊の孊士号を取埗したした。


Neil Quinn
Analog Devices(ADI)
システム・アプリケヌション・゚ンゞニア
医療/ラむフ・サむ゚ンス/蚈枬噚(MLI:Medical Life Science and Instrumentation)チヌムに所属しおいたす。これたでに、光孊匏蚈枬噚やむンピヌダンス蚈枬噚、産業甚の高速通信むンタフェヌス、iCoupler®を適甚したデゞタル・アむ゜レヌタなどを担圓。2013幎にアむルランド囜立倧孊メむヌヌス校で電子工孊の孊士号、2021幎に組み蟌みシステム・゚ンゞニアリングの孊䜍を取埗しおいたす。