Qualcommが、TSMCの本社もある台湾北部の新竹サイエンスパークに新たな自社ビルの建設。その落成式を3月17日に開催したと台湾政府国家科学および技術委員会 新竹科学園区管理局が発表した。

同管理局が誘致、ビルの設計・建設を行い、完成後にQualcommに移管したという。この建物は、米国サンディエゴにあるQualcommの本社ビル以来の2番目の自社ビルとなるという。地上8階/地下4階建てで、床面積は2万7000m2、Qualcommではこの拠点を最重要な海外コア拠点と位置づけ、核となる「Taiwan Operations and Manufacturing Engineering and Testing Center」やCPU設計チームのほか、5Gテストラボ、マルチメディアR&Dセンター、モバイル人工知能イネーブルメントセンターなども入居するという。同社は、このビルをハブとして活用し、台湾の電子業界とのパートナーシップ強化を図り、5Gエコシステムの開発を加速するとともに、台湾のイノベーションと才能を育成するとしている。

  • 台湾新竹で開催されたQualcomm新社屋落成式典の様子

    台湾新竹で開催されたQualcomm新社屋落成式典の様子 (出所:台湾新竹科学園区管理局)

台湾からの半導体購入額は2024年に3000億NTドル規模に

Qualcommの上級副社長兼最高執行責任者(COO)であるRoawen Chen氏は、落成式典に出席し、「Qualcommが台湾に進出して20年になり、台湾との関係はますます緊密になってきている。当社の台湾での半導体チップ購入額は2022年に2400億NTドルに達したが、2024年には3000億NTドルに達すると予想される」と述べたという。

また台湾政府関係者からは、世界における台湾の半導体産業の重要な地位を強化する役割を果たすことを期待するといった向きもあり、台湾半導体サプライチェーン関係者からは、QualcommとTSMCの関係がさらに深まるとの見方も出ている。

最近、Qualcommは、ファウンドリへの製造委託(前工程)と、パッケージおよびテスト(後工程)について、中国系企業に出していた注文を台湾系企業にシフトさせているという話を台湾メディアが報じている。

それによると米中の対立が激化し、米国の対中半導体規制が強まりを見せる中、中国への依存は地政学的リスクとなるとし、前工程をTSMCやUMCに、後工程もASEグループなど台湾系OSAT3社に、プローブカードも台CHPT(中華精測)、指紋認証技術もASEほか台湾系3社に取引を絞り込む見込みだとしている。

台湾の半導体サプライチェーン関係者からの情報によると、Qualcommは2022年第3四半期に地政学的リスクを踏まえたサプライチェーンチェーンの再構築を開始。2022年第4四半期に中国での生産の台湾への移管を開始した模様で、現在の進捗状況から判断すると、2023年第2四半期以降の注文より台湾の半導体サプライチェーンでの大量生産が開始されると予想されるという。また、Qualcommの4nmおよび3nmプロセスでの生産も(当初計画されていた韓国ではなく)台湾に集中しており、TSMCはすでにQualcommからの大量の注文を受けている模様だという。