DX(デジタルトランスフォーメーション)や社内業務のデジタル化が声高に叫ばれる現代において、「社内に蓄積されるデータの活用」はビジネスの発展の大きな鍵を握っていることは読者の皆さんも知るところだろう。
今回は、そんな今後のビジネスシーンをリードするデータの社内利用を革新的に進めるセブン銀行のCX(コーポレート・トランスフォーメーション)部 AI・データ推進グループDMO調査役の西嵜靖子氏に話を聞いた。
社内のデータ活用の拠り所「DMO」
今回話を聞いた西嵜氏だが、そもそも彼女が所属している「DMO」という部署にあまり聞きなじみがない。DMOとはどんなチームなのだろうか?
「DMOは、『Data Management Office』の略称で、社内のデータを各部で日常的に使いやすいように整備・運用するチームとして2022年4月に、コーポレート・トランスフォーメーション部内に発足しました。他社でもさまざまな形態でDMOを設置する企業が増えていますが、弊社の中では特に『社内でデータを扱う際の拠り所』として、データ活用のサポートやガイドラインの整備などを通じ、全社員がデータに関して苦手意識をなくして成長していくのを支援することを大切にしています」(西嵜氏)
元々セブン銀行では、世の中の変化に対応するため2018年頃からデータやAIをビジネスに活用したいという想いからPoCを開始。そこでデータは便利で重要なものという事が分かったため、データを使った取り組みを組織立って行うための組織「データ・ラボ」を立ち上げ、ビジネス観点のデータ活用ユースケースのアイディア出しや業務の見える化に取り組んできたという。そして2021年7月に、更に体系的に社内でデータを使っていくという風土を作っていくために、より「変革」に力を入れた「CX部AI・データ推進グループ」と名前と組織形態を改め、今に至っている。
「『コーポレート・トランスフォーメーション』という名前にも表れているように、CX部は人や組織、ビジネスモデル・プロセスについてデータも積極活用して『企業変革』を推進していこうという想いが込められた部署です。データ・ラボは当初、『社内でデータを活用する』ための活動が中心でしたが、CX部に変わってからはデータ活用を全社に広げていくための活動が中心になりました。そして特にDMOチームでは、データになじみのない社員の方たちにも『苦手意識をなくす』という基礎的なところから意識変革やデータ活用のカルチャー醸成を担っています」(西嵜氏)
同行では、社員の意識変革に向けて定期的に「データサイエンスプログラム」というAI/データ研修を『手上げ式』で開催しており、ビジネスでのデータ活用の基礎的な流れや、AIの業務活用の着想法などリテラシーや意欲に応じたプログラムが用意されている。
新入社員は全員、初期研修としてこのデータ活用に関する研修を受講することになっている。また、希望する社員向けにも1~2ヶ月に1回程度開催したり、役員部長向けにも実施しているそうで、現場のリテラシーや意欲の向上と経営層の理解の推進の両方に注力しているという。
将来の目標は「各部が当たり前にデータ活用している会社になること」
上記に挙げた活動以外にも、DMOチームでは「相談ルーム」の運営を行っている。この相談ルームは、リアル・バーチャルの双方に対応しているもので、データ利活用に関して何でも困ったことを気軽に相談できる仕組みになっている。
「相談ルームを始めた2022年5月の相談件数は2件のみでしたが、今では、多い時には毎週のように相談が寄せられます。すぐには解決しないお困りごとが多いので、グループの中で適切なメンバーをアサインして解決に導くお手伝いをします。0歩から1歩、1歩から1.1歩。少しずつ前に進むサポートができたら良いなと思っています」(西嵜氏)
西嵜氏は今後のDMOチームの展開について以下のように語った。
「ここまでCX部やDMOチームの役割を話してきましたが、最終的な目標は『CX部』のような部署が要らない企業になることだ、と部長を始め部員全員で度々話しています。CX部は企業変革を担う部署として設置されましたが、各部署が中長期目線も含めて、「自分ゴト」としてデータ活用などの取組を進めるようになればCX部は不要ですし、本当に強い企業になれると思っています。その状態に少しでも早く近づきたいですね」(西嵜氏)
そして、西嵜氏、個人としては、DMOの活動を通じて、“「あったらいいな」を超えて日常の未来を生み出し続ける。”という当社のパーパスが掲げる未来を創っていきたいという。そのために、各部署の社員と密にコミュニケーションを取りながら部門の垣根を超えてより良い会社にしていくために尽力していきたいそうだ。
「弊社は、常にお客さまの立場で考えて、安心安全で、あらゆる人にもっと便利な日常を創り続けることを大切にしています。そのために、最新のテクノロジーやデータを業務の中で当たり前のように活用する会社にしていきたいと思っています。その未来に向けて、私はデータ活用というジャンルで貢献したいと思っています」(西嵜氏)