千葉大学は2月21日、神奈川県横浜市・横須賀市・三浦市の地盤沈下を「連続差分干渉SAR(合成開口レーダー)解析」(Consecutive DInSAR)という手法を用いて観測し、ほかのモニタリング手法との比較検討を実施した結果、地盤沈下のメカニズムを特定することに成功したと発表した。

  • 神奈川県の地盤変位を示す衛星の解析画像。DInSARで解析された衛星視線方向の相対的な地盤変位を示している。赤色に近いほど沈下傾向、青色に近いほど隆起傾向であることを意味する

    神奈川県の地盤変位を示す衛星の解析画像。DInSARで解析された衛星視線方向の相対的な地盤変位を示している。赤色に近いほど沈下傾向、青色に近いほど隆起傾向であることを意味する(出所:千葉大プレスリリースPDF)

同成果は、千葉大大学院 融合理工学府の西勝之進大学院生、千葉大 環境リモートセンシング研究センターのヨサファット・テトォコ スリ スマンティヨ教授らを中心とした、日本・韓国・インドネシアの研究者が参加する国際共同研究チームによるもの。詳細は、地球科学と環境科学におけるリモートセンシングと地理情報システムの学際的な研究と応用を扱うオープンアクセスジャーナル「Geocarto International」に掲載された。

地盤沈下に対しては、特にそれが沿岸部などで発生した場合は洪水や浸水の危険性が高まることから、定期的なモニタリングを行うことが重要だ。これまで日本における地盤沈下のモニタリングは、観測井戸を用いて地表や地下水位の変化を数か月ごとに計測することで行われてきた。近年は全球測位衛星システム(GNSS)も使われているが、信頼性において観測井戸に及ばないとされている。

日本ではインフラの老朽化が大きな社会問題となっているが、観測井戸も同様の状況にあり、設備の老朽化が進んでいるため定期的なメンテナンスが必要で、そのコストが懸念されている。さらに、少子高齢化が深刻化する日本では、今後は実地測量を担う技術者の不足も危惧されている。そのため、観測井戸に代替できる新しい地盤沈下モニタリング技術が求められていた。

そうした中で、近年注目されているのが「干渉SAR(InSAR)」だ。InSARは、SAR衛星により観測された異なる時期の2つの画像を用いて、地表の標高を測定するリモートセンシング技術である。さらに、Consecutive DInSARは、地盤沈下率や地表速度などの数値化を行うことで、時系列で標高のmm単位の変化を測定し、高精度に地盤沈下を検出することが可能だ。そこで研究チームは今回、SAR衛星の取得したデータを用いて、DInSARを実装したソフトウェアで解析を試みたという。