俳優の大泉洋がブレイクするきっかけともなった人気コンテンツ「水曜どうでしょう」や、全国的に人気がある同局のマスコットキャラクター「onちゃん(オンちゃん)」などで有名な北海道を代表するテレビ局の北海道テレビ放送(HTB)。同社では「WithSecure(ウィズセキュア) コンサルティング」を採用し、クラウド環境における設計レビューとガイドラインを作成している。
今回、導入に至った経緯や実際の効果などについて、北海道テレビ放送 コンテンツビジネス局 ネットデジタル事業部 兼 編成局編成部 兼 技術局放送・ITシステム部の三浦一樹氏に話を聞いた。
2019年からAWSを活用してサービスを構築
三浦氏は、HTBで動画配信システムやECシステムをはじめ、社内システム全体を担当しており、ウィズセキュアのコンサルティングを採用した経緯について次のように話す。
「AWS(Amazon Web Services)を利用して自社開発をスタートしたのが2019年10月にオフライン、オンラインで開催した『水曜どうでしょう祭 FESTIVAL in SAPPORO』の有料ライブ配信でした。それまではシステムを内製開発したことがなかったのですが、エンジニア3人で進めました。その際、決済やログインなどは積極的にSaaSを利用し、当時は3日間のイベント用Webサービスだったため、セキュリティについて注力することはありませんでしたが、その後は新型コロナウイルスの感染拡大により、定常的にWebサービスを持つようになりました」(三浦氏)
HBTではコロナ禍も相まり、水曜どうでしょう祭で得た経験をもとに、AWSなどを活用し、有料ライブ配信・ライブコマース(ライブ配信+グッズ販売)の「HTB onライン劇場」や、水曜どうでしょうから生まれたイベントで、番組ディレクターとファンとの交流、グッズ販売、地元物産品販売といったリアルイベントのライブコマースイベント版「水曜どうでしょうエアCARAVAN」などのサービスを提供するなど、実績を積み上げていった。
こうしたサービスの拡大に伴い、それまで個人情報は懸賞キャンペーンなど発送の目的だけで使用していたが、ユーザーのデータを分析することを想定していたため、利用規約やプライバシーポリシーをはじめとした社内的な体制の整備に2020年後半ごろから迫られるようになったという。
また、同氏は「2020年10月に水曜どうでしょうの新作を配信したのですが売れすぎてしまい、1話放送したらサーバがダウンしました。ただ、ちょうどその時に社内の現場担当者でAWSの資格を取得した方から、全面的にAWSを利用すればダウンしないかも、ということをアドバイスしてらもらい、前売りパックの購入者限定のサービスを構築しました。これにより、サーバがダウンすることはありませんでした」と振り返る。
ウィズセキュアとの邂逅
三浦氏によると、この時点でWeb上でグッズも販売でき、ライブ配信も可能であることに確信できたため、全体的な戦略としてAWSを活用した共通基盤の開発と運用に向けて舵を切る。
ただ、同氏は「不安に思う箇所がフロントエンドとバックエンドのつなぎ込みでした。AWS Well-Architectedでバックエンドが閉じている部分のIAM(Identity and Access Management)の安全性や、ユーザーがログイン後に自分の情報だけが閲覧できるように構築しているつもりではありましたが、実際の動きなど確証が得られていませんでした。フロント寄りの話、かつサーバレスの構成だと意外と選択肢がありませんでした」と吐露する。
HTBでは、サーバレスアーキテクチャのためOSやVM(仮想マシン)を利用していない構成となっており、OSやミドルウェアのセキュリティパッチを考えなくていいものの、どのようなセキュリティ対策を施せばいいのか判然としなかったという。三浦氏は「そこで、ウィズセキュアのことが頭に浮かびました」と話す。
ウィズセキュアと三浦氏の出会いは、2019年に札幌で開催された日本におけるAWSユーザーのコミュニティであるJAWS-UGが主催する「JAWS FESTA 2019 SAPPORO」において、ウィズセキュア(当時エフセキュア) 法人営業本部シニアセールスマネージャーである河野真一郎氏のプレゼンテーションを聴講したのがきっかけだ。
「聴講後はJAWS-UGなどが主催するさまざまなイベントや勉強会でお会いするタイミングが増え、単純接触回数が多くなっていました。当時、ウィズセキュアのプロダクトについてはプレゼンテーションなどで触れられている程度で、個人的には完全に把握しているかといえば、そうではありませんでした。しかし、河野さんにAWSを利用した共通基盤のセキュリティについて気軽に質問したところ、さらに関係性が深まっていきました」(三浦氏)