帝国データバンクは2月7日、人手不足倒産における「従業員退職型」について調査・分析を行った。
コロナ禍からの経済再開が進むなか、従業員を自社につなぎとめることができずに経営破綻した倒産が足元で増加傾向に転じた。2022年に判明した人手不足倒産140件のうち、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の人手不足倒産は、少なくとも57件判明している。これは多くの産業で人手不足感がピークに達した2019年以来、3年ぶりの増加。2022年の人手不足倒産に占める「従業員退職型」の割合は40.7%となり、2021年に続き高水準で推移している。
2022年の「従業員退職型」を業種別にみると、人手不足倒産に占める割合が最も高いのは建設業で50.0%と半数を占めた。設計者や施工監理者など、業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員の離職により、事業運営が困難になった企業などが目立つ結果になっている。また人手不足感が高止まりするサービス業も、人材の獲得競争が激しいソフトウェア開発や老人福祉などの業種で多いことが分かっている。
2023年も既に1万品目超の食品で値上げが予定されるなど物価上昇が止まらず、労働者からは賃上げを求める声が強まっている。賃金アップを求め人材流動性も高まり、大手のみならず中小企業でも月額5000円の大幅ベアで呼応するケースも出てきた。その一方で、賃上げしたくても収益力に乏しく「無い袖は振れない」中小企業も多く、厳しい経営に嫌気がさして役員や従業員が退職したケースもあり、動向は二極化の様相を呈している。転職市場などを筆頭に、賃上げによって良い人材を高給で囲う動きが強まるなか、満足に賃上げされないことを理由に従業員が辞めることで経営に行き詰まり、倒産する中小企業の増加が懸念される。