同社は今回、オールカーボンCO2分離膜に対し、同社が持つ精密構造制御技術を結集させ、カーボンの焼成条件を最適化することで、天然ガス精製プロセスにおける過酷な環境であっても細孔形状を維持し、高いCO2分離性能を発揮する天然ガス向けのオールカーボンCO2分離膜を創出することに成功したという。

そして、実際の天然ガス精製を想定した高圧環境かつ、水蒸気や芳香族炭化水素のトルエンなどの不純物が存在する環境下において、同分離膜を用いたCO2分離試験が実施された。その結果、理想的な性能が維持され、CO2の高効率な分離が可能であることが確認されたという。

  • オールカーボンCO2分離膜の各種環境におけるCO2分離評価結果

    オールカーボンCO2分離膜の各種環境におけるCO2分離評価結果 (出所:東レ)

これにより、従来の高分子膜で必要だった、不純物による可塑化や強度低下を防止するための前処理装置を簡素化し、運転コストの削減が可能となったとしているほか、同分離膜で分離したCO2を再利用することで、天然ガス製造におけるCO2削減にも貢献できるとした。将来的には、CCUS(CO2回収・有効利用・貯留)技術への幅広い適用も期待されるという。

なお、同社は現在、同分離膜を用いた膜モジュールを試作中で、2023年度中に試作サンプルを提供して実ガス実証をしていく計画とした。今後は、天然ガス精製に関連するエンジニアリングメーカーをはじめとするパートナー企業と幅広く連携し、実用化に向けた試作や実証試験を加速させるとしている。