東レは1月31日、同社が2021年に発表した多孔質炭素繊維製の「オールカーボンCO2分離膜」を天然ガス用に最適化し、実際に天然ガス製造の精製プロセスにおいて、高いCO2分圧や不純物が存在する過酷な環境下で同分離膜の耐久性を検証した結果、理想的な性能が維持され、CO2の高効率な分離が可能であることが確認されたと発表した。
化石燃料による火力発電では、必ずCO2が発生してしまうため、いかにその発生量が少ない資源を利用するか、そして発生してしまったCO2をどれだけ効率的に分離・回収できるかがポイントとなる。化石燃料の中では、発熱量あたりのCO2排出量が最も少ないのが天然ガスである。
しかし、天然ガスはどこで採取できるものでもCO2濃度が一定というわけではない。天然ガス資源の開発において、CO2濃度の低いガス田からの開発が優先された結果、近年はCO2濃度の高いガス田が多くなっており、天然ガス精製において効率的なCO2の分離・回収がより求められている。
一般的なCO2分離技術として用いられているのが、「アミン吸収法」だが、同吸収法は、CO2濃度が高いほどエネルギー消費量が大きくなることから、エネルギー消費が少ない膜分離法に注目が集まっている。ところが、膜分離法に用いられる既存の高分子膜は、天然ガス精製における高CO2分圧下や不純物存在下において、膜の目詰まりや不純物による可塑化で細孔形状を維持できず、性能が低下してしまうという課題を抱えており、性能を維持するための大規模な前処理装置が必要となり、運転コストが高くなってしまうという問題があったという。
そうした中、東レが2021年4月に発表した「オールカーボンCO2分離膜」は、中空糸状である多孔質炭素繊維の支持体表面に対し、薄い炭素膜の分離機能層を形成した2層構造を有することが特徴であり、支持体を極限まで細径化することで膜モジュールの軽量化・コンパクト化が可能という優れた点も有しているという。