全国に624店舗を展開する写真用品店「カメラのキタムラ」や写真館「スタジオマリオ」などを主要事業として展開することで知られるキタムラ。同社では、リユースカメラの買い取り、販売を行うEC事業の拡大にあたって、ボトルネックを抱えていたという。

12月13日、14日に開催された「TECH+フォーラム クラウドインフラ Day 2022 Dec. 変革を支えるニューノーマルのITインフラとは」に同社 EC事業部 ECマーケティング部 部長の加久保健氏が登壇。事業拡大のボトルネックとは何だったのか、AIを導入することでそれをどのように解決したかを解説した。

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「EC関与売上」の最大化が目標

ECによる中古カメラの買い取り・販売は自宅などのPCから注文を受け、宅配で商品を受け渡すのが一般的だが、キタムラではそれに加え、自宅で注文した商品を店舗で受け取れる仕組みを用意している。店舗で注文することも可能で、その場合は店頭のタブレットからECサイトへアクセス・注文し、店舗で商品を渡すという仕組みだ。「宅配で受け取れるだけでなく、全国に展開している店舗での受け取りも選択できる点がこのサービスの大きな強み」だと加久保氏は言う。

商品の注文は自宅からが7割、店頭が3割程度だが、受け取りについてはこれが逆転し、店舗での受け取りを選択する顧客が7~8割となっているそうだ。同社ではこの宅配と店頭受け取りの合計であるサイト受注金額を「EC関与売上」としており、現在はEC関与売上の最大化をKPIとして取り組んでいる。

  • キタムラのECサービスの概要

コロナ禍にあって、EC事業が置かれる状況も変化した。キタムラでは、全社の売上高に占めるEC関与売上の割合を「EC関与率」と称し、これによって会社全体に対するECの貢献度を指標化しているが、従来は50%程度だったEC関与率がコロナ禍により、10%近く伸びたのだ。中古商品の販売についても伸びていて、「2021年度は過去最高の売上となった」と加久保氏は語る。

ECでの買い取りは、同社のECサイトから注文を受けた顧客に返送用の箱を届け、顧客自身が査定を希望する商品を箱詰めして送り返すという仕組みだが、これについても金額、関与率ともに増加傾向にあり、こちらも2021年度に過去最高の金額を達成しているという。

リユース拡大を妨げていた2つのボトルネック

加久保氏は、EC事業の中でも特に中古商品のリユースの拡大に力を注いできた。リユースは、店頭やECサイトを訪れた顧客から買い取った商品を販売する。そのため、商品の買い取り量を大幅に伸ばす必要があった。そこで2019年に中期計画を策定した際には、全国の店舗で顧客から幅広く商品を買い取れるようにすることを目標とした。しかし「当時は買い取り量の拡大が上手くできていなかった」と同氏は明かす。ではそのボトルネックになっていたものは何だったのか。

一つは、機種がすぐに分からないことだ。顧客の持ち込む商品の機種が特定できなければ、買い取り価格を提示することができない。カメラには古い機種、生産数の少ない機種も存在するため、知識のある店員がいないと機種判定が難しいのだという。全ての店舗に熟練の店員を配置するのは容易ではなく、熟練店員の休日や休憩時間中などにも顧客は来店する。そんなタイミングでも、本来は、瞬時に機種を特定して査定ができるようにしなければならない。

もう一つは、査定結果がバラついたり査定にミスが多かったりしたことだ。買い取った商品をWebサイトに掲示する際、同程度の商品でも金額が異なることもあったと言うが、これについて加久保氏は、「買い取り価格を決める基準が属人化しており、全国の店舗で同質な査定ができていなかった」ことを理由に挙げた。