Intelは2022年8月30日に開始した「Pathfinder for RISC-Vプログラム」を中止した事を公開した(Photo01)。
すでに同プログラムのWebページにも、同じ文面が掲載されている。
元々Pathfinder for RISC-VはRISC-VベースのASICをIFS(Intel Foundry Service)で簡単に構築する事を目的としたものであり、Professional EditionとStarter Editionの2つが用意される。Professional Editionは有償のもので、これに参加することで、
- CPU IP:Andes AX45MP&NX27V、Codasip Group L31/MIPS eVcore I8500&P8700、OpenHW Group CVE4&CVA6、SiFive P550
- Accelerator:Cadence Tensilica Vision DSP&AI Accelerator IP、Crypto Quantique Security IP
- Software:Check Point Software Check Point Quantum IoT Protect、IOTech Systems Edge Xrt
- Dev Environment:Codeplay Software Toolchain、Imperas Software Simulator、Siemens EDA Veloce Prototyping Platform、SoC.One Cloud base Environment
- Others:Fraunhofer IMS AIRISC SoC IP、STMicroelectronics MEMS Sensor Driver
を自由に利用できるようになる。IntelもEclipse IDEとQEMUベースの仮想環境、GNU/LLVM Toolchain、Yocto Linux/Zephyr OS/FreeRTOSを提供予定であった。
一方Starter Editionは無償で参加可能であるが、その代わり提供されるのはCPU IPとしてCHIPS AllianceのRocket Chipのみであり、Eclipse IDEやQEMUベースの仮想環境、GNU/LLVM Toolchain、Yocto Linux/Zephyr OS/FreeRTOSなどは提供されるもののサポートは無し、という話であった。もちろん、このままでIFSのASICに持ってゆくのも不可能で、ではどうするか? というとQEMU上で動かすか、もしくはTerasicのDeveloper Kit for Intel Pathfinder for RISC-Vを購入してこの上で動かす形になる。
2022年8月30日にあわせてProfessional Serviceのパートナー企業は一斉にリリースを出しており、また昨年12月1日にCEVAは同社のBX1/BX2 DSPを同プログラムに提供するリリースを出すなど、エコシステムパートナー自身はこのプログラムにやる気は十分であり、今回の発表は寝耳に水の事であったと思われる(上述のTerasicも、まだDeveloper Kitがオーダー可能状態になっている)。
Intelはその理由を現時点で一切明らかにしていない。ただ「Q4 2022 Intel Corporation Earnings Conference Call」(1月26日 14:00 PT)の直前にこれを行ったという事から考えられる理由は2つある。
- IFSの戦略方針変換:そもそもPathfinder for RISC-Vの目的はIFSを広範に利用してもらうための呼び水である。その呼び水を中止するというのは、IFSのターゲットが変わった、あるいはIFSの提供時期が大幅にずれた可能性がある。
- コスト削減:Intelはこのところコスト削減策を急速に進めている。2023年1月17日、tom's HardwareはIntelがイスラエル・ハイファに建設予定だった新しいIDC21(Intel Development Center)の建設をキャンセルしたと報じ、また21日にはオレゴン州ヒルズボロに建設予定だったMega Labの建設もキャンセルしたと報じている。こうしたコスト削減の波にPathfinder for RISC-Vプログラムも晒された結果存続できなかった、という可能性もある。
この件の詳細に関してConference Callで明らかにされるかどうか、現時点では定かではない。