大阪大学(阪大)は1月25日、強いレーザー光で中性子を生成する実験を行い、生成される中性子の数はレーザーの集光強度の4乗に比例して増加するという法則性があることを発見し、1011(1000億)個という高い強度の中性子数をレーザーの1ショットで生成できることを確認したと発表した。

同成果は、阪大 レーザー科学研究所(ILE)の余語覚文教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する物理学および応用物理学とその学際的な分野を扱うオープンアクセスジャーナル「Physical Review X」に1月31日付で掲載される予定だという。

大強度レーザーを物質に集光させることで、陽子などの粒子を加速でき、さらにそれを特定の物質に照射すると、核反応が発生して中性子を生成することが可能であるため、従来のように原子炉や加速器、放射性同位体などを必要とせずに中性子を生成できるようになる。

レーザーの集光強度を上げるほどより高温のプラズマを生成でき、その結果、中性子数を増やすことが可能とされているが、これまで集光強度と発生中性子数の具体的な関係式は知られていなかったという。そこで研究チームは今回、ILEが運用する世界屈指の大強度レーザー「LFEX(エルフェックス)」を用いて、同じ照射条件で集光強度を変えつつ、発生した中性子数を計測することにしたとする。

1ピコ秒の極短時間に、レーザーを数10μmという小さい領域に集中させると、物質は電子が剥ぎ取られてイオン(=プラズマ)と化す。今回は、この高温・高密度のプラズマから発生した高エネルギーのイオンを中性子生成ターゲットに照射することで、非常に短い時間幅で中性子を連続して発生させることに成功したという。その結果、レーザーの集光強度の4乗に比例して、中性子数が増加することが判明したほか、同現象を説明できる理論モデルの構築にも成功したとする。

このように、集光高度を上げると1ショットでより多くの中性子を生成できることから、さまざまな利用が可能になると研究チームでは説明しており、1000億個の中性子という高輝度中性子パルスに、中性子などの粒子の運動エネルギー(速さ)を計測するための手法の1つである「飛行時間計測法」を組み合わせ、中性子共鳴吸収による物質の非破壊分析法に関する試験も実施したという。