新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、物質・材料研究機構(NIMS)、アイシン、茨城大学、アイシン高丘、岩崎電気の6者は1月24日、NEDOの先導研究プログラムにおいて構築した低コスト製造プロセスを用いて、入手が容易で環境性能に優れる鉄・アルミニウム・シリコンだけを利用した熱電材料「FAST(Fe-Al-Si-Thermoelectric)材」を適用した熱電発電モジュールを製作し、照明器具の排熱を利用して発電した電力による小電力無線路車間通信に成功したと発表した。

同成果は、2023年2月1日から3日まで、東京ビッグサイトで開催される「nano tech 2023」において、IoT機器の試作機のパネルとともに展示される予定だという。

IoT社会の実現のためには、無数のセンサなどに電力を供給するための小型自立電源の開発が重要となる。特にモビリティ分野においては、歩行者なども混在する一般道での安全な自動運転を実現するためには、道路側にもセンサを設けることが考えられており、車両に情報を伝達するための路車間通信を行えるだけの電源が求められる。

そうしたIoT機器の電源としては環境発電(エナジーハーベスト)が考えられている。そうした環境発電の1つに温度差を利用する熱電発電がある。そうした背景を踏まえ、2018年度からNEDO、NIMS、アイシン、茨城大の4者によって研究がスタートしたのが、FAST材の高性能化とモジュール化の技術開発であり、2019年度には低温熱源を用いてIoT機器の駆動やBLE通信に適用できるFAST材を用いた小型熱電発電モジュールが開発されるに至ったという。

FAST材は、室温から200℃までの低温熱源を利用した発電が可能で、大気中で650℃までの優れた化学的・熱的安定性、耐酸化性を保有、長期耐久性に必要な機械特性と小型発電モジュール作製に必要な加工性をも備えているという優れた特性を持つ一方、路車間通信を行うIoT機器に取り付けて安定的に駆動させるためには、FAST材のさらなる高性能化と膨大な設置数量を鑑みた発電モジュール全体の低コスト化の両立が必要とされていたほか、通信機器も含めた回路設計技術の確立が、社会実装に向けた課題として残されていたという。

そこで2021年度からアイシン高丘と岩崎電気も加わり、「新産業創出新技術先導研究プログラム/次世代交通システムを支える基盤自立電源の開発」事業がスタート。より多くの発電量や高い信頼性が求められる発電モジュールの路車間通信への実装を見据え、FAST材の高性能化と製造プロセスの低コスト化の両立に向けた取り組むが進められてきたとする。