ネットアップは1月25日、都内でカンファレンス「NetApp INSIGHT Japan」を開催した。本稿では、米NetApp CEOのジョージ・クリアン氏と、日本法人であるネットアップ 代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏の基調講演を紹介する。

“進化したクラウド”が持つ4要素

はじめにクリアン氏は「われわれは30年にわたり、継続的に自分たちのテクノロジーソリューションを業界でベストなものにしてきました。クラウド視点での進化として、まずクラウドジャーニーの初期段階は終わりました」と明言した。

  • 米NetApp CEOのジョージ・クリアン氏

    米NetApp CEOのジョージ・クリアン氏

同氏は、クラウド導入初期段階の課題として無秩序に広がるクラウド、データとアプリのサイロ、セキュリティリスクの増大の3点を挙げている。

そして、次のフェーズとしてクリアン氏は「”進化したクラウド”です。なぜ、進化が重要かと言えば、第1段階で直面した課題はクラウドを完全に活用することを阻害していましたが、“進化したクラウド”は課題を排除することができるからです」と説明した。

同氏によると、進化したクラウドは「データ管理とセキュリティ」「イノベーションとスピード」「簡易な運用」「サステナビリティ」の4つを持ち合わせたものを指す。

  • 進化したクラウドが持つ4つの要素

    進化したクラウドが持つ4つの要素

データ管理とセキュリティ

データ管理とセキュリティでは、ハイブリッド/マルチクラウド環境下における課題は複雑性を挙げている。同氏によると、複数のクラウドからデータを取得するとともにクラウド間で自由にデータが移動し、クラウドの可用性の担保に加え、迅速かつセキュリティを高い形でデータを取得しなければならないという。

こうしたデータ管理の課題に対して、同社のストレージOS「ONTAP」はエンタープライズクラスのデータマネジメントができ、Amazon Web Service(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platformなど主要パブリッククラウドに統合されており、一貫としたデータ管理を可能としている。

イノベーションとスピード

イノベーションとスピードに関しては、企業では基幹ビジネスの目的に対してイノベーションのスピードを速めたいと考えていると、クリアン氏は指摘する。イノベーションはデータとアプリケーションにより生み出され、ビジネスプロセスのデジタル化が必要になり、進化されたクラウド体験ではどこでも開発を可能とし、アプリケーションを展開できるようにすることが鍵になるという。

例えば、Kubernetesなどのクラウドネイティブのテクノロジーはクラウドだけではなく、データセンターにも展開できることから、イノベーションのスピードを高めることを可能としている。

簡易な運用

簡易な運用なついて、昨今ではクラウドとデータは拡大しているため、スピードと柔軟性のバランスや自動化、一貫したSLA(Service Level Agreement)、コスト管理が必要になるものの、実現できるとは限らず、先進諸国においてはスキルを持つ人材の確保が課題であり続けているからだという。

そこで、同社ではさまざまな環境でバラバラにテクノロジーが存在し、個々にサイロがある状況ではなく、継続的な最適化をデータ管理やコンピューティングに持ち込むソリューションを提供している。

一例として、開発サイクルにおいてCI/CD(継続的インテグレーション・デリバリー)が唱えられているが、ソフトウェアのライフサイクルの大半は本番環境にあるという。同氏は「いかに本番環境で継続的な最適化を図るのかということが課題になります。当社では継続的な最適化のほか、オープンソースのソリューションを提供しており、ライフサイクル管理の重要な部分を支援することができます」と強調した。

サステナビリティ

サステナビリティでは、運用面においてコストや効率、パフォーマンス、セキュリティだけではなく、気候変動の課題にどのように対応するかが求められている。特に上場企業の投資家や経営層にとってもサステナビリティは重要な課題となっている。

クリアン氏は「環境へのインパクトを減らすために、使用されていないデータをエネルギー効率性が近代化されているデータセンターを持つパブリッククラウドに移行すべきです。また、情報ツールを活用しつつ適切な意思決定を下すために、当社は最高のサービスを用意しています。自社におけるテクノロジープラットフォームの稼働率やコンサンプションをCloud Insightで把握を可能としています」と述べた。

そして、同氏は「ネットアップを立ち上げた30年前からカスタマーエクスペリエンスをシンプルにすること、データをお客さまのビジネスの資産にするというビジョンは変わっていません。30年経過した今もインフラやデータ、アプリケーションサービスを強固にしつつ、お客さまのビジネスが進化するとともにクラウドが進化するなかで、支援できる体制を整えています」と力を込めていた。