MM総研(MMRI)は1月23日、GIGAスクール構想実現に向けたICT環境(GIGAスクール環境)の利用状況を調査した「小中学校におけるGIGAスクール端末の利活用動向調査」の結果を発表した。これによると、課題は自治体・教員共に教員のICTスキルと認識しているが、対策への評価は分かれているという。

同調査は同社が2022年12月に、全国自治体1741の教育委員会へ電話聞き取りなどにより、また国公立小中学校に勤務する教員にWebアンケートにより実施したもの。有効回答数は、教育委員会が1144件、教員が1200人。

自治体にGIGAスクール構想実現の基盤となる児童生徒用の端末の性能について尋ねたところ、十分な性能を備えていると回答した自治体が9割を超えた。

備えていないと回答した7%の自治体は、端末事態に加え、ペンや画面などのUI(ユーザー・インターフェイス)やインターネット接続性など、周辺機器や利用体験全般に対する課題を指摘している。

  • 児童生徒用端末はGIGAスクール構想実現に十分な性能を満たしているか 出典: MM総研

授業における1人1台端末の利用頻度を2021年10月の調査と比較すると、「毎日利用している」と回答した自治体は2021年10月の時点では26%だったが、今回の調査では75%に拡大しており、1年2か月の間に49ポイント増加した。

  • 授業における1人1台端末の利用頻度比較(自治体数ベース) 出典: MM総研

GIGAスクール端末の利用用途は、2021年10月の時点では1自治体あたり利用用途の数としては平均1.7件だったものが今回は3.8件に増えており、端末利用の幅も広がっている。

具体的な利用用途を見ると、「学習支援ソフトやアプリの利用」「調べ学習」「考えをまとめて発表」が前回調査から引き続き上位を占める。

加えて、「教員と児童生徒のやりとり」「児童生徒同士のやりとり」といったコラボレーション機能を利用する自治体も増えている。特に、教員と児童生徒のやりとりは44%と、前回調査から31ポイント増加した。

  • GIGAスクール端末の平均用途数と用途別の利用頻度 出典: MM総研

小中学校の教員に端末の利用用途を尋ね、その結果を授業における端末の利用度合いと組み合わせて分析したところ、端末を利用できている教員ほどコラボレーション機能の利用割合が高い。特に、「ほとんど利用できていない教員」と「十分に利用できている教員」では利用率に2倍以上の開きがあった。

端末の利用用途に関する結果を踏まえると、GIGAスクール環境は児童生徒同士が学びを深めるための必要不可欠な基盤になっていると同社は見る。

  • 授業における端末利用度合いとコラボレーション機能の利用割合の関係 出典: MM総研

GIGAスクール環境の課題について、自治体(教育委員会)側と教員側それぞれの認識をクラ別と、最大の課題は「教員のICTスキル」で、両者が一致した。

しかし、2位以降の順位は一致せず、自治体側と教員側とで認識の違いが生じている。

  • GIGAスクール環境の利用拡大に対する主な課題 出典: MM総研

これらの課題に対して対応策を打てているかを見ると、最大の課題である「教員のICTスキル」については、自治体は95%が「対応策をとれている」と回答したのに対し、教員は40%に留まった。同社は、現状の教員ICTスキルアップ施策がうまく機能していないと分析する。

  • 教員のICTスキルの向上に向けた対応策の有無 出典: MM総研

今回の調査結果を受け、同社取締役研究部長の中村成希氏は多くの教員が自らのICT活用スキルを課題としている点について、「スキル向上の目的が、既存の手法とICTを組み合わせて個別最適・協働的な授業スタイルを確立することにあるのであれば、教員はICTツールを効果的に使う方法を習熟する必要がある。継続的に教員のスキルアップ環境を整備することも必要だろう。政府は、個別施策だけでなく、学校自らがICTを活用し授業スタイルのアップデートができる『デジタル変革組織』に生まれ変われるように支援策を検討していくことが重要となろう」と述べている。