国立天文台(NAOJ)は1月20日、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam」(HSC)を用いた大規模観測「すばる戦略枠プログラム」により、約55億光年先の宇宙において、50億光年以遠の宇宙で確認された中では最大となる超銀河団を発見。この超銀河団が、およそ満月15個分の天域にまたがって銀河とダークマターが強く密集している上、少なくとも19個の銀河団が付随していると発表した。

  • HSCが捉えた超銀河団領域の3色合成画像。中央画像の等高線は銀河の密度分布を、淡赤色はダークマターが広範囲にわたってとりわけ強く密集する領域を示している。番号が付記された四角は超銀河団に付随する銀河団の位置。周囲のパネルは、これら19個の銀河団の拡大図で、銀河団でよく見られる、赤い銀河が群れ集まる様子が捉えられている。左上の満月は、超銀河団の領域と比較した場合の、満月の見かけの大きさ(C)国立天文台

    HSCが捉えた超銀河団領域の3色合成画像。中央画像の等高線は銀河の密度分布を、淡赤色はダークマターが広範囲にわたってとりわけ強く密集する領域を示している。番号が付記された四角は超銀河団に付随する銀河団の位置。周囲のパネルは、これら19個の銀河団の拡大図で、銀河団でよく見られる、赤い銀河が群れ集まる様子が捉えられている。左上の満月は、超銀河団の領域と比較した場合の、満月の見かけの大きさ(C)国立天文台(出所:すばる望遠鏡Webサイト)

同成果は、NAOJ ハワイ観測所の嶋川里澄特任助教、広島大学大学院 先進理工系科学研究科の岡部信広准教授らの研究チームによるもの。詳細は、英国王立天文学会が刊行する天文学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載された。

天の川銀河は、アンドロメダ銀河とともに少なくとも50個~60個といわれる矮小銀河を重力で従えて「局所(局部)銀河群」を形成している。こうした銀河群よりも規模が大きく、より多くの銀河が重力で結びつき合った集団が銀河団だ。地球から約5900万光年と最も近くに位置するのが「おとめ座銀河団」で、史上初のブラックホールシャドウの撮影で知られる巨大楕円銀河「M87」が最も明るく、矮小銀河を含めるとおよそ3000もの銀河が属する。

そして、局所銀河群などおとめ座銀河団周辺の複数の銀河群は、すべておとめ座銀河団に重力で引き寄せられており(ただし、実際には宇宙膨張の影響の方が強いため、おとめ座銀河団と局所銀河群の間は離れていっている)、おとめ座銀河団を中心とした「局所超銀河団」または「おとめ座超銀河団」などと呼ばれている。また2010年代半ばには、おとめ座超銀河団が、さらに100倍もの大きさを持つ「ラニアケア超銀河団」の一部であることも確認されている(超銀河団よりも大きい構造・銀河集団を表す言葉がないため、超銀河団を内包する構造も、超銀河団と呼ばれる)。