東京大学(東大)と国立天文台(NAOJ)は1月12日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)臼田局の64m電波望遠鏡を用いて、非常に短い電波パルスが放射される謎の多い天体現象である「高速電波バースト」(FRB)を日本の望遠鏡として初めて検出したことを発表した。

同成果は、東大大学院 理学系研究科 天文学専攻の池邊蒼太大学院生、JAXAの岳藤一宏主任研究開発員、東大 宇宙線研究所の寺澤敏夫名誉教授、台湾・國立中興大學の橋本哲也助教、東大大学院 理学系研究科 天文学専攻の本間希樹教員らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、日本天文学会が刊行する欧文学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。

2007年に初めて観測されたFRBは、その大半がミリ秒オーダーという非常に持続時間が短い電波パルスを発することが知られているが、その母天体や放射機構などは不明で、謎に包まれた天体現象とされている。FRBの放射の性質やそれを取り巻く環境を知るためには、さまざまな周波数帯で観測を行うことが重要だとされているが、現在のところ、FRBは約600MHzや1.5GHzでの検出に偏っているという。

またFRBは、1回限りの電波パルスしか観測されない「単発型」が多い点も観測の難しいところとされている。ただし、中には複数回の電波パルスを放射する、「リピート型」と呼ばれるタイプも存在している。「FRB 20201124A」もそれに含まれ、なおかつ最も活動的なリピート型の1つに数えられている。同天体は2020年に発見され、2021年の4月に活動が活発になり、これまで海外の望遠鏡により1000回以上のFRBが観測されてきた。そして2022年1月下旬に再びFRBが放射されていることが報告され、活動期に再び突入したものと推測されている。

そこで研究チームは今回、1984年から活躍している直径64mの大型パラボラアンテナである臼田電波望遠鏡を用いて、約2GHzと8GHzによる同時観測を合計約8時間にわたって実施することにしたという。