大阪大学(阪大)は1月19日、薬剤抵抗性を持ち、農作物に甚大な被害をもたらすことで知られる蛾の一種の「ハスモンヨトウ」の急所が胸部や顔部であることを突き止め、画像検出して飛行中にレーザーで撃墜して駆除することに成功したと発表した。
同成果は、阪大 レーザー科学研究所の藤寛特任教授、同・山本和久教授、京都大学の日本典秀教授、東北大学の堀雅敏教授、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)の杉浦綾ユニット長、同・中野亮上級研究員、同・渋谷和樹研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、1月19日「レーザー学会学術講演会第43回年次大会」にて発表されたという。
農業では世界の農作物生産額165兆円のうち、およそ26兆円の農作物が害虫・害獣被害により失われているとされている(2017年のデータ)。これまで、害虫駆除には、主に化学薬剤(農薬)が使用されてきたが、近年は、害虫が薬剤抵抗性を持つようになり、そうした農薬が効かなくなってきているという。
薬剤抵抗性を持つ害虫に対し、物理的な方法として、レーザーを使った害虫駆除の実用化が進められており、すでに米国では、家畜などに寄生する小さな蚊の駆除技術として用いられているという。しかし、蚊は小さいことからその身体全体にレーザー光を照射して駆除することが容易なのに対し、比較的大きな蛾を同様に全体照射して駆除するために大きなエネルギーが必要だったという。
そこで研究チームは今回、一晩でキャベツなどを食い荒らす害虫であるハスモンヨトウの各部位に対し、局所的に青色半導体レーザー光を照射して損傷度合いを調べることにしたとする。