大阪大学(阪大)は、米ロチェスター大学のOMEGAレーザーおよび米ローレンスリバモア国立研究所のTITANレーザーを用いてレーザー宇宙物理実験を実施して地上に強磁場を生成し、その磁場が変形する現象である「磁気リコネクション」を起こし、その結果として電子が高速に加速されることを発見したと発表した。
同成果は、阪大 レーザー科学研究所の藤岡慎介教授、阪大 理学研究科 物理学専攻の瀧澤龍之介大学院生のほか、ロチェスター大とローレンスリバモア国立研究所に加え、米・プリンストン大学、米・ロスアラモス国立研究所、米・ミシガン大学、米・メリーランド大学、ルーマニア・極限光施設原子核物理研究所、ルーマニア・ブカレスト大学、フランス・エコールポリテクニークの計約30名の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の物理学全般を扱う学術誌「Nature Physics」に掲載された。
人類が有する最先端の技術を駆使しても到達できないほどの超高速まで加速された電子が、宇宙では多数確認されている。その超高速電子を生み出すメカニズムを説明するための理論やモデルが複数提唱されているが、まだ解明することができていない観測結果も複数あるという。
その説明不能な現象の1つが、おうし座の方向におよそ6500光年の距離に存在する、西暦1054年に出現した超新星の残骸である「かに星雲」におけるガンマ線フレアだという。
既存の粒子加速機構およびガンマ線放射機構では説明がつかない未解決の問題とされる中、磁力線がつなぎ替わる(リコネクションする)現象である磁気リコネクションが宇宙における加速機構として近年注目されるようになってきたという。同現象によって、磁場のエネルギーの一部が電子のエネルギーに移ることは、以前から知られていたものの、どこまで電子を加速させることができるのかまでは不明だったという。そこで研究チームは今回、地球の磁気圏やかに星雲と相似な状態を実験室で再現し、そこから加速される電子のエネルギーを直接観測することにしたとする。