アイシンは12月22日、愛知県刈谷市が推進する「刈谷スマートシティ」の取り組みの一環として、刈谷市および市内の幼稚園などの3施設と連携し、「子どもの車内放置検知システム」の実証実験を開始したことを発表した。
夏場の暑い時期に窓を閉め切った自動車の車内は、特に日光が差す場合はビニールハウスと同様の効果が働くため、クーラーの切れた状態だと、およそ5分で熱中症指数が警戒すべき状態となり、10分で厳重警戒、15分で命の危険域に達することが、日本自動車連盟(JAF)が実際に行った実験結果をもとに発表している。まして子ども、中でも乳幼児の場合は体温調節機能が未発達のため、高温下では短時間で体温が上昇し、死に至る危険性がある。
再三、このように夏場の車内は危険であることが報道されているにもかかわらず、駐車した車内に子どもやペットを長時間放置し、クーラーが切れていたため、熱中症で亡くなるといった事故が後を絶たない。最近では、幼稚園バスの車内に子どもが置き去りにされて死亡したという事故が記憶に新しいところだ。
こうした痛ましい事故は日本に限った話ではなく、世界的に重大な社会問題となっている。最悪の事態を防ぐため、国内外において車内に子どもが残っていることを検知するための装備を義務化する動きが加速している。
そうした中で今回、刈谷市が推進する「刈谷スマートシティ」の取り組みの一環として、アイシンの「子どもの車内放置検知システム」を用いた実証実験がスタートした。
今回は子どもを送迎する施設のバスに、(1)センシングによる検知・通報、(2)運転手に点検を促す仕組み、(3)園児自ら救助を求める「助けてボタン」の3つの手段を組み合わせた専用システムを装備。実際の運用を検証しながら実用化に向けたさらなる改良や精度の向上につなげるという。
なお同社が開発を進めている「子どもの車内放置検知システム」は、センサとして薄型ミリ波レーダーが採用されている。ミリ波レーダーは近年、クルマでは前走車との距離計測などに利用されているが、対象物を把握する解像度が非常に高いことが特徴とされている。
「子どもの車内放置検知システム」では、センサから得られた情報が、対象物の位置を示すドットデータとして集積される。そして、子どもが呼吸するときのわずかな胸の動きを検知し、生体反応として捉えることが可能。これにより、子どもと荷物などと的確に識別することができるという。
今後同社は、「子どもの車内放置検知システム」を後付け可能な商品として販売していくことを検討しているとする。必要な場所に早期に適切に届け、安全・安心な社会づくりに貢献することを目指すとしている。