そして子育て世代(産後0~6年以内)の女性1135名を対象に、MDPSに加え、世界的に広く使われているうつ尺度「BDI-II」との検証が行われた。すると、両者の高い相関性を見出すことができたという。

さらに、1135名のうちから偏りなくランダムに抽出した785名を学習用データとし、産後うつのリスク因子を加えて「多変量ロジスティック回帰分析」を行った上で、MDPSに「月経再開の有無」を加えた「MDPS for mothers(MDPS-M)」が作成された。その検討の結果、MDPS-Mは、子育て世代の女性における軽症以上のうつを、感度84.9%、特異度45.7%で検出できることが判明したという。検証用データとして残りの350名においても同様の解析を行ったところ、感度84.4%とほぼ同様の結果が得られ、その妥当性が確認された。

  • (左上)MDPS。(右上)MPDSの得点とBDI-II(うつ尺度)は正の相関を示す。(左下)多変量ロジスティック回帰分析を用いたMPDS-Mの開発。(右下)MPDS-MのROC曲線および感度

    (左上)MDPS。(右上)MPDSの得点とBDI-II(うつ尺度)は正の相関を示す。(左下)多変量ロジスティック回帰分析を用いたMPDS-Mの開発。(右下)MPDS-MのROC曲線および感度(出所:阪大プレスリリースPDF)

今回の研究成果により、身体症状をもとに産後・子育て世代の女性の軽度のうつ症状の早期発見が可能になった。MDPSは気血水概念に基づく質問であるため、回答結果を受けて食事などの生活指導を始め、薬物治療までの具体的介入方法が想定されるという。産後の母親の身心を支えることで、子供の成長や母親自身のその後の人生もより健康的なものになっていくだろうとする。

MPDSの長所は、身体症状に関する質問であるため、抵抗なく答えられ、かつ評価環境に左右されないところにあるという。そのため非専門医でも扱いやすく、子育て世代のうつのスクリーニングに役立つことが考えられるとした。また今後は、子育て世代の女性以外の勤労年代や男性にも使える尺度として改良していくことで、社会全体へのさらなる貢献を目指すとした。