どちらも結合様式を除いて同じ構造をしており、高い結晶性を有していることがX線回折測定から確かめられている。ただし、Brunauer-Emmett-Teller測定による比表面積が測られたところ、DNCAは456m2g-1だったのに対し、DCNAは1066m2g-1と、DCNAの方がDNCAよりも2倍以上高い比表面積値が示されたとする。

また、アミノ基の非共有電子対に注目し、効率的かつ可逆的にアミノ基をプロトン化することが可能なアスコルビン酸を用いた酸処理を実施。水素発生の効率化のためには、(1)光吸収と励起子の形成、(2)電荷分離と電荷輸送、(3)表面反応の3つが鍵となるが、(1)と(2)の過程評価に向け、非接触評価手法である「光励起時間分解マイクロ波電気伝導度測定法」を用いて、これらの材料の光電気伝導度を評価したところ、酸処理を行った後の光電気伝導度は、DNCAでは1.3x10-5cm2V-1s-1、DCNAでは0.6x10-5cm2V-1s-1であり、DCNAの方が光電気伝導度が優れていることが明らかにされた。

研究チームでは、結合の方向性によってまったく異なる光電気特性が与えられるため、最適な材料設計を行うには従来のような部品の選択だけではなく、結合様式も考慮に入れる必要があることがわかったとしている。

さらに、電子状態の変化が光触媒効果に与える影響を調べるため、水を用いた水素発生反応が行われたところ、DNCAでは9.57μmol h-1(1gあたり3.19mmol h-1相当)の速度で水素発生が行われるのに対し、DCNAでは83.66μmol h-1(1gあたり27.89mmol h-1相当)と、DCNAの方がDNCAよりも8倍以上も高い効率で水素発生が進行することが判明したとしている。

  • 新規設計したCOFにおける2種類の構造異性体と水素発生反応の模式図

    新規設計したCOFにおける2種類の構造異性体と水素発生反応の模式図。結合様式に着目したことで、水素発生反応が8倍以上に向上した (出所:京大プレスリリースPDF)

このほか理論計算から、酸処理により伝導帯のエネルギーが大きく下がるが、価電子帯のエネルギーはほとんど変化を受けないことが確認された。DCNAにおける高い水素発生は、水素反応を引き起こすのに十分な伝導帯のエネルギー準位と、高い電荷輸送特性が兼ね備わっていることが要因と考えられると研究チームでは説明している。

  • (左)時間分解マイクロ波電気伝導度測定法による過渡光電気伝導度の見積もり。(右)酸性条件下での水素発生量の時間変化 (出所:京大プレスリリースPDF),A時間分解マイクロ波電気伝導度測定法による過渡光電気伝導度の見積もり

なお研究チームでは、今回の研究で見られる結合の方向性の重要性は多種多様な結合に関して成り立つものであり、今後の探索に新たな自由度が加わったことで、より優れた特性を有する新規COF材料の展開が期待されるとしている。