NEDOとルネサス エレクトロニクス(ルネサス)は12月8日、複雑なタスクを処理するDRP(動的再構成プロセッサー)を用いたAI(人工知能)チップを開発したと発表した。電力効率は1W(ワット)当たり10TOPS(10兆回/秒)で、従来技術に比べて最大で10倍の電力効率を実現したという。
同AIチップは、ルネサス独自のAIアクセラレーター「DRP-AI」と電力効率をさらに高めるAI軽量化技術を組み合わせて開発。これにより低消費電力かつリアルタイムで応答するAI機器として、セキュリティカメラや自動搬送車、サービスロボットなどのさまざまな装置内に組み込む設置が可能になるという。さらに、現場の環境やタスクの変化にも自律対応するエンドポイント学習システムも開発し、基本動作を実証したとしている。
同AIチップは、代表的なAIモデル軽量化手法のうち、認識精度に影響の少ない演算を省略する「枝刈り」と呼ばれる手法により、AI処理の高速化を実現している。
AIモデル内で認識精度に影響のない演算は不規則に存在することが一般的。そのため、ハードウエア処理の並列性と枝刈りの不規則性とに差があり、効率よく処理できないことが大きな課題となっていたという。
そこで「DRP-AI」が持つ動的な回路切り替え技術などの高い柔軟性を活用することで、枝単位できめ細かく枝刈りした場合でも効率よく演算をスキップすることができるようになった。演算量を最大90%削減する枝刈り率のAIモデルにおいて、従来技術に比べ最大で10倍の高速化を実現し、1W当たり最大で10TOPSの電力効率を達成。
また、モデルで異なるが、枝刈りにより演算量を90%削減した場合でも、認識精度は3%程度の低下にとどまり、ほぼ同等の精度が得られることを確認したとしている。
今後、NEDOと各機関が連携し、同技術に関する詳細評価および実証実験を進める方針。また、ルネサスは本研究成果のAI技術をいち早く実用化につなげるため、IoTインフラ事業向け製品への適用を計画しているとのことだ。