花王とポーラスター・スペースは11月28日、パーム農園に甚大な被害をもたらすガノデルマ病害の解決に向けた業務提携への合意を発表。花王からポーラスター・スペースへ出資を行ったことも併せて発表した。
食用油や界面活性剤などの原料で、世界でも多く消費されている植物性油脂のパーム油およびパーム核油は、世界の人口増加に合わせて需要も増加しており、持続可能な生産・調達に対する要求が高まっている。
その一方で、パーム油の原料となるアブラヤシの栽培においては、ガノデルマ属糸状菌の一種であるボニネンスによる病害が問題となっている。アブラヤシがガノデルマに感染すると、樹の水分伝達機能が阻害されるなどの影響から実の収量が低下し、やがて枯死してしまう。
パーム油の主要生産地であるインドネシアやマレーシアでは、このガノデルマ病害による被害拡大が問題となっているものの、現時点で有効な防除方法はなく、感染した樹をなるべく早く発見し伐採することで対処しているという。しかし、ガノデルマ感染初期のアブラヤシは目視での判別が難しく、判別できた時にはすでに感染が広がっているケースが多発しているとのことだ。加えて、大きいところでは10万ヘクタールを超える広大な農園の多くでは、スタッフが歩いて見回ることで病害の管理をしており、人件費の負担増加や専門家不足による診断精度の低下も課題だとする。
この状況を受け、花王は、超小型衛星やドローンなどを活用したリモートセンシング技術を有するポーラスター・スペースと共に、パーム農園におけるガノデルマ病害の管理技術確立に着手した。
両社は、その取り組みとして、樹の分光情報(スペクトル)を分析する特殊なセンサカメラを搭載したドローンで上空からパーム農園を撮影することで、目視では識別が難しい初期のガノデルマ症状を発見するモニタリング技術の開発を目指すという。また、パーム油生産地に油脂製品の生産拠点を保有する花王は、同社がトレーサビリティ確保に向けて構築したサプライチェーンとの協力関係を活用し、実際のパーム農園で新たなモニタリング技術の適用可能性に関する実証実験を行うとしている。
両社は今後、技術開発や実証実験を通じたモニタリング技術の確立を目指すとともに、パーム農園へのサービス提供についても検討を行うとのこと。また将来的には、花王の農業事業領域で培われたアジュバント技術と組み合わせてガノデルマ防除を達成することで、持続可能なパーム油の生産・調達への貢献を目指すという。