ガートナージャパン(Gartner)は12月1日、ローコード開発ツールの選定にあたり事前に考慮すべき、3つの観点を発表した。現状、多くの国内企業では選定時の混乱や選定後の課題が顕在化しているという。

  • ローコード開発ツール検討の多角的な視点

ローコード開発ツール(ローコード・アプリケーション開発プラットフォーム、LCAP)はグローバルで広く採用が進んでいるといい、2025年までに企業が開発する新規アプリケーションの70%にはローコードまたはノーコード・テクノロジが使用されるようになると同社は見る。

一方、ツールの選定に関する相談が同社へ多く寄せられているといい、国内の多くの企業では、何をどう選定すべきの迷いや、選定後に機能不足や運営上の課題が顕在化する状況が見受けられるとのこと。

選定に関して、同社のアナリストでシニア ディレクターの飯島公彦氏は、「要件を適切に策定する上で、開発機能の詳細だけの検討ではなく、実現したいアプリケーションの目的やユースケースの具体化など、事前に考慮すべき3つの観点が漏れていないかの確認が重要です」と指摘する。

1つめの観点は、採用する目的とビジネス成果を明確にすることだ。

ローコード開発ツールの適切な選定には、ビジネス上のどのような目的のために、あるいはどのようなビジネス上の問題を解決するためにツールを利用するのかをまず考慮する必要があるという。

目的を明確にすることで、多くの企業が選定に当たって抱える「効果があるのか」という悩みや、適用後の「効果が分からない」といった状況を回避できるとしている。

2つめは、具体的なユースケースを検討し、選定上の重点を見極めること。

これにより、ローコード開発ツールを選定する上で何を重視すべきかが見えてくるという。例えば、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みで、業務の自動化/連携/インテリジェント化による省力化を目的に適用するケースがあるとのことだ。

また、内製化で適用する例や、アプリケーション近代化、自動化に向けたビジネス・プロセス管理 (BPM)/ケース管理、市民開発の必要性による例などが増えているという。

飯島氏は、ビジネス・ユーザーには、かなり高度なプログラミング知見を持つパワー・ユーザーが存在することも考慮する必要があると指摘した上で、「パワー・ユーザーと一般のビジネス・エンドユーザーの使うツールを分けるのか同じにするのか、意思決定が必要となります」と語った。

3つめは、アプリケーション自動生成以外の幅広い機能を多角的に捉え、用途に合った適切な範囲で活用すること。

ローコード開発ツールは、人工知能(AI)による開発支援機能の追加など開発の高度化を図ると共に、テストやデプロイに至るまでの開発プロセスの自動化率の向上や、テンプレートや業務部品の品ぞろえの充実を図っており、また多様な領域を単一の製品でカバーしていく傾向があるという。

飯島氏は、「ローコード開発ツールは、アプリケーションを構築する上で必要な構成要素全て対する開発、実行、運用管理の機能を包括的に提供する統合プラットフォームとしての色合いを強めています。そのため、採用製品の検討も多角的に実施する必要があります。この点は、投資対効果を勘案する際の重要なポイントになります」と指摘している。