後処理は、塩化鉄を用いてEDOTをPEDOTへ変換すると同時に、塩化鉄でPEDOTのドープ処理を行うというもので、ドープ処理は導電性を大きく変化させることから重要とされている。そこで今回は、先行手法では1段階で行われていた酸化重合とドープ反応を、EDOTをPEDOTへ変換する酸化重合反応と、ドープ処理の2段階に分けることにしたとする。
EDOTをPEDOTへ変換する過程は先行手法と同様に塩化鉄が用いられ、ドープ処理は「p-トルエンスルフォン酸」(PTSA)が用いられた。その結果、EDOTの含有量を先行手法の半分以下に減らしたにも関わらず、導電性を16Scm-1と100倍以上に向上させることに成功したという。
また、光硬化性樹脂の成分としては、柔軟な造形物が得られる「ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート」が用いられ、それにより後処理した後にピンセットで屈曲可能なフレキシビリティを有することが確認された。
さらに、フレキシブル配線の基板として実績のあるポリイミドフィルム上への造形を行うため、その上に「アクリレート基」を付与する表面処理を行い、フィルムの屈曲に対しても造形物が剥離しない密着性が実現され、実際にそのフィルムを用いた青色発光ダイオードが作製され、屈曲させた場合でも発光することが確かめられた。これにより作製された造形物が、フレキシブル配線として機能していることが示されたほか、光造形を用いているため、2次元的な導電性パターンのみならず、導電性を有する3次元的な造形物を作製できることも確認できたとしており、今回の成果について研究チームでは、フレキシブルな3D配線やセンサの作製に応用できるとしている。
なお、研究チームでは今後、さらなる導電性の向上や有機デバイスなどの電子素子と組み合わせることで、さまざまなウェアラブルセンサや医療デバイスの実現が期待されるとしている。