島津製作所は11月16日、赤外分光法とラマン分光法という2つの分析手法を同一の装置で行える、赤外ラマン顕微鏡「AIRsight(エアサイト)」の販売を国内外で開始したことを発表した。

赤外顕微鏡は、赤外分光法を用いた分析装置と光学顕微鏡を組み合わせた顕微鏡の一種で、定性に用いるデータベースが充実しており、異物検査で多く使用されている。一方、ラマン顕微鏡は、ラマン分光法で得られるラマンスペクトルを検出し測定する分析装置と光学顕微鏡からなる装置で、赤外顕微鏡が不得意とする水溶液や無機物、微小なサンプルの分析に効果を発揮する。

この2つの特長を組み合わせた同製品はステージにサンプルを1回セットしさえすれば、あとはサンプルを移動させる必要もそれぞれの測定部位を探す必要もなく、極微小部の同一箇所において、相互に補完し合える赤外スペクトルとラマンスペクトルの両方を1台で取得できるものであり、1台2役ということで、省スペース化の観点からも優れた点となっているという。

同製品には、同社独自の広視野カメラと赤外用顕微カメラ、ラマン用対物レンズが搭載されている。広視野カメラでは最大10mm×13mmまで観察可能なことに加え、可変デジタルズームにも対応。さらに、赤外用顕微カメラおよびラマン用対物レンズと位置情報を共有することで、狙った観察対象を確実に捉えるとしている。なお、赤外用顕微カメラでは最小30μm×40μm、ラマン用100倍対物レンズでは最小7.5μm×10μmの視野まで観察可能だという。

赤外とラマンの両スペクトルの測定は、制御ソフトウェア「AMsolution」上で切り替えて行える。両スペクトルの重ね合わせての表示と解析も可能なほか、同制御ソフトでは、対象物の長さの計測機能も備えており、計測したい始点と終点をクリックするだけで、その長さを画面上に表示でき、またボタン1つで計測した長さをレポートとして出力することが可能だという。

なお、同製品の価格は、「AIRsight」単体で2650万円(税別)からとなるが、単独では使用できず、同社のフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)「IRXross」との接続が必要で、その場合のシステムとしての合計価格は、3200万円(税別)からとなるという。目標販売台数は、発売後1年間で国内外合わせて100台としており、同社では今後も、さまざまな用途においてより正確な分析データを提供し、異物分析やマイクロプラスチックといった社会課題の解決に貢献していくとしている。

  • AIRsight

    フーリエ変換赤外分光光度計「IRXross」と接続した赤外ラマン顕微鏡「AIRsight」 (出所:島津製作所PDFカタログ)