今回の研究におけるポイントは3点だとしている。

1つ目は、「適切なデバイス層構造の設計による光の漏れ(面内損失)の低減」で、過去のデバイスのしきい値電流密度が高い原因に関する課題抽出として、過去のデバイス層構造に対する独自解析が実施された結果、デバイス面内方向の光の漏れ(面内損失)が大きな値であったことが判明。これを受けて、適切な層構造や共振器サイズを選択することで、面内損失を十分に低減する構造が見出されたという。

2つ目は、「GaN系フォトニック結晶形成法の確立」で、フォトニック結晶の形成方法に関して見直しが図られたという。従来はフォトニック結晶を形成する際、二酸化ケイ素(SiO2)層を下敷きに利用した手法が用いられていたが、同手法では空孔が不均一になりやすく、それにより光の共振が乱され、レーザー特性を悪化させる要因となっていたとする。

そこで、有機金属気相成長法(MOVPE法)の成長条件を整えてGaNの結晶成長を制御し、SiO2を用いずに空孔を形成する手法を開発することで、極めて均一で高品質なフォトニック結晶の形成が可能になったとする。

そして3つ目は「正方格子・2重格子フォトニック結晶構造の採用」で、これまでGaN系フォトニック結晶レーザーにおいては、フォトニック結晶の不均一性の問題で、レーザー発振させやすい三角格子構造が採用されてきたものの、それでは出力を得にくいという問題があったという。それに対して今回は、高品質フォトニック結晶形成方法の考案により高品質なフォトニック結晶の形成が可能となったため、高出力化が期待できる正方格子構造を採用することにしたとする。

さらには、GaAs系フォトニック結晶レーザーで開発された、2重格子フォトニック結晶の概念が、GaN系フォトニック結晶レーザーでも採用されたほか、電極構造の見直しも行われたという。具体的には、従来はレーザー光が電極で遮られていたが、出射方向が変更され、電極に光取り出し口を設置することで、光取り出し効率を向上させたという。

これら3点を踏まえた上で、デバイスが作製されたところ、GaN特有の結晶面で囲まれた、極めて均一な空孔の形成が確認されたほか、青色の波長でもってワット級の出力、かつビーム拡がり角が~0.2度という狭いビームの出射に成功したとする。

  • GaN系フォトニック結晶レーザーの模式図

    (a)GaN系フォトニック結晶レーザーの模式図。(b)作製された2重格子・正方格子フォトニック結晶の電子顕微鏡画像の一例。(c)電流-光出力特性。ワット級の動作が実現された。(d)出射されたビームの遠視野像。単峰形状で、~0.2°の極めて狭いビーム拡がり角のレーザー光が得られたという (出所:京大プレスリリースPDF)

青色系の高出力・高ビーム品質なレーザー光源の需要は多いことから、今回の研究成果は、電気自動車生産における銅の加工のほか、CFRPのレーザー加工、金属3Dプリンター、車載用光源などの高輝度照明、水中(海中)LiDARなど、さまざまな分野への応用が期待されると研究チームでは説明するほか、出射されるビームは単峰形状で極めて狭い拡がり角であることから、光学系を省略することが可能となるため、応用製品の小型化も期待できるため、今回の成果は工業的にも大きな意義を持つともしている。

なお、今後については実用化を目指し、さらなる高出力化や高効率化を進めていく方向で研究開発を進めていくとしている。