オリエンタルコンサルタンツとNECは11月1日、衛星に搭載した合成開口レーダー(SAR)で取得した、時期の異なる2つのデータから標高をモニタリングする技術を開発したことを発表した。

近年、温暖化の進行がもたらす気候変動の影響などにより、日本の各地において水災害が激甚化・頻発化しており、国土交通省や流域自治体などでは「流域治水」の取り組みを加速させている。

流域治水の取り組みでは、流域の状況を把握するため、航空機に搭載したレーザスキャナを用いて地上の標高や地形の形状を精密に調べる「航空LP測量」や、河川の縦断方向の天端高さや主要な構造物の標高・位置、断面方向の形状などを測量する「縦横断測量」などの監視・観測が定期的に行われている。しかし、流域が広範にわたるため、コストや労力の観点から十分なデータの取得に至っていないことが課題となっているという。また、流域治水において的確な治水マネジメントを行うためには、大雨などの事象発生後の土砂移動や生産源を把握することが重要となるため、タイムリーなデータの取得も求められるとする。

これらの状況に対して両者は今回、広範性・周期性を特長とする衛星に搭載したSARにより取得されたデータに着目することにしたという。SARは、衛星から地球の地表面にマイクロ波を照射し、その反射波を受信して画像を生成する技術で、天候の影響を受けず、また昼夜問わずセンシングが可能という特徴がある。

今回開発された解析技術は、これまで経時変位(時系列差分干渉解析)として利用されてきた技術を発展させたものだという。具体的には、衛星SARで撮像されたデータを解析し、対象エリアの標高の面的な算出を行う。次に、土砂移動後の撮像データの解析を行い、面的な高さを算出。この2つの面的高さデータを差分解析することで、土砂移動量などの算出をより安価でタイムリーにモニタリングするというものだという。

  • 今回の開発技術の概要

    今回の開発技術の概要 (出所:オリエンタルコンサルタンツ プレスリリースPDF)

今回の技術を活用することで、流域内における土砂の経時変化を体積として把握することが可能となるため、定量的な土砂量と、いつ・どこで生産土砂量が発生したかなどの客観的事実に基づいて、さまざまな対策立案ができるようになるとする。たとえば、土砂堆積によって生じる河積阻害、土砂堆積速度の推定に基づく砂防堰堤の計画的な除石計画の立案など、これまで定量的な予測・計画が難しかった事象の定量化に活用できるという。

  • 流砂系で一貫した総合的な土砂管理に向けた未来像

    流砂系で一貫した総合的な土砂管理に向けた未来像 (出所:オリエンタルコンサルタンツ プレスリリースPDF)

両者は今後、降雨後の土砂移動量を予測する技術の開発に向けて、引き続き連携を強化していくとする。これにより、両社はさらに効果的な流域治水を支援し、流域全体の安全・安心に貢献していくとしている。