東京大学(東大)、九州大学(九大)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の3者は10月21日、2020年12月に小惑星「リュウグウ」の試料の入った「サンプル収納コンテナ」を開封する直前に、コンテナのフタとコンテナ本体との隙間で発見された黒色の粒子2個について組織観察や構成鉱物の元素分析を行ったところ、リュウグウ由来であることを確認したと発表した。

同成果は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の中藤亜衣子研究開発員、東大理学部 地球惑星環境学科の稲田栞里学部生、JAXAの坂本佳奈子主任研究開発員、九大大学院 理学研究院の岡崎隆司准教授、JAXAの澤田弘崇主任研究開発員、東大理学部 地球惑星環境学科の橘省吾教授(JAXA特任教授兼任)を中心に、東大、九大、JAMSTEC、JAXAの研究者全17名が参加した共同研究チームによるもの。詳細は、日本地球化学会が刊行する欧文学術誌「Geochemical Journal」に掲載された。

2020年12月8日に、リュウグウ試料が入ったサンプル収納コンテナがJAXA宇宙科学研究所(ISAS)に持ち込まれ、分析がスタート。そして1週間後の15日に、リュウグウの粒子が間違いなく採取されていることが確認された。ところが、その準備段階期間中の同月8~11日に、サンプル収納コンテナ本体とフタの間の空間(コンテナ密封のための封止面の外側)において、実は1mm程度の大きさをした暗色の粒子が2個発見されていたという。

ウーメラ立入制限区域のカプセル着地点付近の土壌や、カプセルを大気圏飛行時の熱から守るための耐熱素材(アブレータ)とも見た目が異なるため、リュウグウ試料のように見えたが、コンテナの外で見つかったために疑わしい(Questionable)として「Q粒子」と命名。ただし破棄されることなく、速やかに窒素置換デシケータに保管された。

その後、リュウグウ試料の本格的な分析が始まり、それと並行して、橘教授率いる「はやぶさ2」サンプラーチームと、ISAS 地球外物質分析グループが中心となり、Q粒子に関しても詳細分析が進められることとなった。その結果、Q粒子を構成している鉱物の種類や形状、化学組成や、岩石組織など、さまざまな点において、同粒子はリュウグウ試料とよく似ていることが判明したという。

ただし、間違いなくリュウグウ粒子であるとするためには、リュウグウ試料との類似が指摘されている「イブナ型炭素質隕石」(CI)ではないことをきちんと示す必要もあった。これに対して研究チームが注目したのが、Q粒子の大半を構成する、細粒の含水ケイ酸塩鉱物の化学組成だという。

  • 発見されたQ粒子

    (左)発見されたQ粒子。(右)コンテナ外部にQ粒子が混入したイメージ (出所:九大プレスリリースPDF)