東京理科大学(理科大)は10月24日、アルツハイマー型認知症の原因物質として知られるタンパク質の「アミロイドベータ」(Aβ)の投与によって作製された認知症モデルマウスにおいて、“愛情ホルモン”とも呼ばれる「オキシトシン」の脳内への移行性を向上させた「誘導体化オキシトシン」を経鼻投与したところ、同モデルマウスの認知行動障害が改善されることを明らかにしたと発表した。
同成果は、理科大薬学部薬学科の岡淳一郎名誉教授、同・斎藤顕宜教授、同・山下親正教授らの研究チームによるもの。詳細は、日本神経精神薬理学会および日本臨床神経精神薬理学会が刊行する欧文学術誌「Neuropsychopharmacology Reports」に掲載された。
アルツハイマー型認知症の発症原因は、Aβが脳内に蓄積することで脳神経が障害され、その結果として脳の一部が萎縮することとされている。しかしいまだに不明な点が多く、有効な治療法は確立されていない。
そうした中で研究チームは2020年7月に、マウス海馬のスライス標本に対してAβを曝露することにより海馬ニューロンに神経活性障害が生じることを確認したほか、その神経活性障害に対し、オキシトシンを添加することで回復することを報告していた。しかし、その際の生体内におけるオキシトシンの効果については不明だったとする。
そこで今回の研究では、Aβを脳の中心部にある脳室内に投与することで作製されたアルツハイマー型認知症モデルマウスを用いて、行動実験を行うことにしたとするほか、臨床応用の可能性を考慮して、非侵襲的な投与方法についての検討も実施することにしたとする。