広島大学は10月21日、微小に集光した紫外線レーザーを用いた「高分解能角度分解光電子分光(ARPES)実験」を行い、三次元トポロジカル絶縁体「Bi2Te3」のトポロジカル表面電子が、原子の熱振動によりどの程度散乱されるのかを数値化し、それが散乱過程の数で決まることを解明したと発表した。

また、同絶縁体のトポロジカル表面電子における電子-格子相互作用の結合定数も調べられ、銅やアルミニウムよりも小さく、そしてエネルギーに依存してその大きさが変化する0.02~0.13の値を取ることも併せて発表された。

同成果は、広島大大学院 理学研究科のAmit Kumar大学院生(現・広島大 放射光科学研究センター(HSRC) 研究員)、同・大学院 先進理工系科学研究科の宮井雄大大学院生、HSRCのShiv Kumar助教、同・島田賢也教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する物性物理とその関連分野全般を扱う学術誌「PHYSICAL REVIEW B」に掲載された。

非磁性絶縁体とは、電子のスピンが揃っていないために磁石にくっつかず、電子が動けないために電流が流れない物質のことである。その非磁性絶縁体中の中で、2005年に理論的に予想されたのが「トポロジカル絶縁体」だという。

同物質は、内部は非磁性絶縁体だが、その表面に金属的に振る舞うトポロジカル表面電子が存在するという特徴を持つ。その表面電子は、運動する方向に直交するように電子のスピンの向きが定まるという点も特徴である。

物質に電気が流れる時、電気抵抗によりジュール熱が発生してエネルギーが失われる。電気抵抗の源は、格子を組んで配列した原子の熱振動によって電子が散乱され、電子の運動状態が変化することにある。この過程で電子が受ける相互作用を「電子-格子相互作用」といい、その強さを数値化したものが「結合定数」で、この定数は、大きければ原子の熱振動による散乱を受けやすく、小さければ受けにくいということを表すという。

典型的な三次元トポロジカル絶縁体として知られるBi2Te3(テルル化ビスマス)についても、これまでトポロジカル表面電子の「結合定数」を決める実験や理論計算が行われてきた。しかし、桁違いに異なる結果が出ており、また同定数がどのように決まっているのかもよくわかっていなかったとのことで、研究チームは今回、同定数を決めるため、微小領域に集光した紫外線レーザーを用いたARPES実験を行うことにしたという。