分子科学研究所(分子研)は10月20日、無機物のハロゲンと有機物の配位子を組み合わせることで、高い活性を示す非金属錯体触媒を開発し、既存の触媒よりも少ない触媒量で、有機合成反応を完結することに成功したと発表した。

同成果は、総合研究大学院大学(総研大)の大石峻也大学院生、分子研の藤波武博士研究員(研究当時)、総研大の桝井悠院生(研究当時)、分子研の鈴木敏泰博士、総研大の加藤雅之大学院生、分子研の大塚尚哉助教、同・椴山儀恵准教授らの研究チームによるもの。詳細は、物理・生命科学・地球科学などの幅広い分野を扱うオープンアクセスジャーナル「iScience」に掲載された。

分子性触媒は環境調和性に優れており、その開発は、機能性物質を生み出す有機合成において必要不可欠な研究課題だという。金属に有機配位子を組み合わせた有機金属触媒や、金属を含まず炭素・水素・酸素・窒素などの元素からなる有機触媒など、開発研究が盛んに進められている。

一方、無機物であるヨウ素や臭素は、触媒としての潜在性が認められてはいたものの、分子性触媒としてデザインして有機合成反応に応用する試みは、これまで検討されていなかったという。そこで研究チームは今回、分子性触媒の研究分野で十分に活用されていなかった「ハロゲン」を有機配位子と組み合わせることで触媒を開発することにしたとする。

具体的には、一価ハロゲンである「ハロニウムX+(I+,Br+)」に、有機物である窒素系配位子が組み合わされて、非金属錯体触媒「[N…X…N]Y」がデザインされたという。

  • 今回開発された非金属錯体の構成要素と触媒構造

    今回開発された非金属錯体の構成要素と触媒構造 (出所:分子研Webサイト)