低ノイズな信号計測を実現するためには、有機材料と無機材料の融合によって得られる高い導電性が重要だとする。具体的には、生体ドライ電極に利用している有機(高分子)材料は、極めて伸縮性の高いエラストマーと導電性高分子からなり、材料中でナノメートルからマイクロメートルサイズの相分離構造を形成することが可能だという。

この場合、形成された導電性高分子の凝集体が、厚み方向への特異的な導電性を発揮する。また相分離構造は、エラストマーの2次元ネットワークを形成し、厚み方向の可視光透過性と粘着力、面方向の高い伸縮性を実現しているとした。

  • 生体ドライ電極と薄膜センサシートのイメージ

    生体ドライ電極と薄膜センサシートのイメージ。略語は、EEGが脳波図、PPGが光電式容積脈波図 (出所:阪大Webサイト)

さらに薄膜センサシートでは、肉眼では見えない銀/金コアシェルナノワイヤからなる無機(金属)材料が配線材料として利用されていることから、高導電だという。この配線のネットワークを強化する成膜技術を構築することで、これまで報告されているものよりも耐伸縮性が高められているとした。

生体ドライ電極を内蔵する薄膜センサシートは、皮膚/電極/配線/小型無線計測器における、イオンと電子伝導を高めたシステムといえるという。その結果として低ノイズな無線計測システムが実現し、身体動作を妨げない状態で、脳波による睡眠ステージ判定や、筋電による手指動作判定が実証されたとする。

また薄膜センサシートを、カメラ式光電式容積脈波記録法のターゲット部位に組み込むことで、ワイヤレス脳波記録中に脈波や血中酸素飽和濃度の計測も実現されている。

今回の研究成果で得られた柔軟性や透明性を有する薄膜センサシートは、ターゲット部位の脳波、心電、筋電、脈波、血中酸素飽和度、血流などのリモート計測システムを構築可能だ。将来、人の動作を妨げずに、疾患を早期発見する遠隔システムの実現に期待がかかるとしている。