東北大学は10月7日、同大サイバーサイエンスセンターが運用している、ベクトル型スーパーコンピュータ(スパコン)「AOBA(通称)」の増強を図り、既存システムの性能と比べ14倍以上となる総理論演算値21.05PFlopsを達成する「AOBA-1.5」(仮称)として2023年8月から運用を開始することを発表した。
スパコンは現在、大きく分けてスカラ型とベクトル型に分けられ、それぞれ得意とする分野などがある。例えばベクトル型スパコンは科学技術計算においてその有用性が高く評価されてきたほか、近年ではデータ駆動科学やAIといった新しい応用分野でも活用が期待されるようになってきた。
富岳に代表されるスカラ型の中にも、ベクトル命令(SIMD命令)を持つものもあり、両者の違いはあいまいになりつつあるが、ベクトル型では、スカラ型に比べて、より多くのデータをまとめて処理することが可能といった違いがある。そうしたベクトル型として特性を持つことから、現行のAOBAも毎年1500名を超える日本中の研究者に利用されており、常に混雑した状態が長く続いてきたという。
そうしたことを踏まえ、同大では今回、より多くの研究者により高性能で使いやすい計算環境を提供することを目的に、AOBAの性能増強を決定したとする。
AOBA-1.5は、NECの最新世代スパコン「SX-Aurora TSUBASA C401-8」を中核として採用することで、カタログスペック21.05Pflop/sの総理論演算性能を予定している。この性能は、ベクトル型スパコンとしては世界最大規模になるという。
また、メモリ性能(総メモリバンド幅)は9.97PB/sとしており、高いメモリ性能が要求される科学技術計算などで優位性が発揮されることが期待されるという。
東北大 サイバーサイエンスセンターでは、特色あるベクトル型スパコンを利用する環境を引き続き全国の研究者に提供するとともに、それを活用する技術においても産学連携をより一層進め、その研究開発の拠点として世界をリードしていくとしているほか、M7以上の地震により発生が予想される津波による浸水被害地域の予測を行うシステムもスパコンを活用してきたことから、平時において学術目的に利用されるだけではなく、緊急時には減災のための社会基盤として機能することもスパコンの重要な役割としている。
なお、今後については、より広い用途で臨機応変にスパコンを活用する方法を開拓し、防災減災を目的とする社会基盤としての要請にも応えていくとしていている。