東京大学(東大)は10月4日、有機超伝導体において弱磁場で均一だった超伝導状態が、約20T以上の強磁場中では、超伝導部分と金属部分が周期的に変調した構造を持つ特殊な超伝導「FFLO(Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov)状態」になることを発見したと発表した。

同成果は、東大 物性研究所(物性研)の今城周作特任助教らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。

超伝導は現象としての発見から100年以上が経つが、現在も謎が多い現象とされている。基本的にはBCS理論で説明されるが、中には「磁場に弱い」という弱点の1つを克服できる特異なFFLO状態など、特殊な超伝導も存在していることが知られている。

FFLO状態ではBCS理論で説明される通常の超伝導と異なり、超伝導状態の電子対運動量が有限となる。この有限の運動量により、超伝導部分と金属部分が実空間上で周期的に変調した構造を持つという特徴を示し、磁場による破壊効果を免れているという。しかし、FFLO状態は理論として提唱されてから半世紀以上が経つが、その空間変調性を直接観測した例はなかったとされる。

FFLO状態の発現には、本来は超伝導の天敵ともいえる強磁場環境が必要であり、乱れが少ない綺麗な超伝導体でしか現れないことが予想されている。しかし、多くの超伝導体はその強磁場領域に到達するまでに超伝導状態が磁場によって破壊されてしまうか、原子欠陥や不純物によりFFLO状態自体が抑制されてしまう。また、FFLO状態を精密に観測できる手法自体が少ないという課題もあり、これら問題によって実験的検証が困難だったという。

  • FFLO状態の概念図

    FFLO状態の概念図。結晶中で超伝導部分(赤)と金属部分(青)が交互に現れる周期構造を示し、超伝導部分では電子対(黄)が、金属部分では対になっていない電子(緑)が存在する (出所:東大 物性研Webサイト)

そこで研究チームは今回、有機超伝導体の1つである、「κ-(BEDT-TTF)2Cu(NCS)2」を研究対象とすることにしたという。有機超伝導体が選ばれたのは、有機分子が持つ特異な分子形状のおかげで、以下の2点の理由からFFLO状態が現れる可能性が高いと期待されているからだという。

  1. 特定方向に磁場を印加した際の超伝導状態は磁場に強い
  2. 異分子混入や欠陥形成が起きにくい

実験では、パルス強磁場を用いてFFLO状態が現れると予想される強磁場領域まで超音波測定による音速が測定された。ここではFFLO状態が現れるとされる条件に合わせるため、温度は絶対温度1.6Kで、磁場は結晶のc軸方向に0.1度以内の精度で印加された。