シスコシステムズは9月28日、クラウド型コンタクトセンター「Webex Contact Center」のサービスを、2022年中に日本国内で提供開始すること、Web会議用デバイス「Webex Devices」の機能強化したことを発表した。
オムニチャネルに対応した「Webex Contact Center」
「Webex Contact Center」は、ハードウェアを用意することなく、オムニチャネルやAPI連携に対応したクラウドコンタクトセンターサービス。音声による対応も、クラウド電話サービス「Webex Calling」など、高品質な音声プラットフォームと2023年に連携が予定されている。さらに、ビデオ機能を追加することで、聴覚に障害を持つ人に向けたアクセシビリティの課題も解決する。
デモでは、AIを活用したサービスが紹介された。例えば、電話番号を発信通知しているユーザーが2回目に電話をした場合、コンピュータの音声はその人の名前を呼び掛ける。ユーザーがAIによる対応でよいと回答すれば、AIが対応を行い、AIで対応しきれなくなったら人による対応に切り替わる。
また、AIとのやり取りは記録されているので、オペレーターに代わったとしても、一から説明をし直す必要がない。コールセンターに電話をした際、受付する人が交代し、一から説明しなおさなければならないケースも多いが、「Webex Contact Center」であれば、そうした事態が回避される。
米国シスコシステムズ Webex カスタマーエクスペリエンス アジアパシフィックジャパンアンドチャイナディレクターのJamie Romanin氏は、「企業は顧客とつながり続けなければいけない。それには、カスタマージャーニーを俯瞰する必要があり、われわれは、カスタマージャーニーについて、スマートかつアクティブに、パーソナライズされたやり取りにすることで顧客体験を変革する。Webexによってすべてをつなげることで、コネクテッドな顧客体験を創造する」と語った。
このビジョンを実現するため、同社はimimobileを買収したが、その製品はWebexブランドに統合されているとのことだ。
さまざまなユースケースに対応するWeb会議デバイスを拡充
今回、「Webex Desk」シリーズ、「Webex Room Bar」、「Webex Board Pro」の新製品が発表された。ホームオフィス コラボレーション ハブ「WebexDesk」は限定でカラーバリエーションが増え、また、ポータブルな専用端末「WebexDesk Mini」が販売を開始した。
また、ホットデスク、ホテリングなど高度なコラボレーションが必要な次世代のオフィススペースに最適なデスクトップデバイスとして、「Webex Desk Hub」が国内では10月よりの販売が予定されている。ディプレイに設置して利用する「Webex Room Bar」は、、Microsoft TeamsやGoogle Meet、Zoomなどのさまざまな会議にシームレスに参加可能であり、こちらも10月から国内で販売開始される予定。
「Webex Board Pro」はオールインワンデバイスで、Web会議機能に加えて、デジタルホワイトボード、データ保存の機能なども備えている。トップ画面には、Microsoft Teams, Zoom, Google Meetと、他社のWeb会議ツールのアイコンが表示されており、ワンクリックでそれらの会議に参加できる。
デジタルホワイトボードは、付属のスタイラスペンのほか、手書きにも対応している。画面上のパレットを用いて、画面上のコンテンツの色を自由に変更できる。タッチパネルになっているため、画面の縮小・拡大も可能で、コンテンツは保存することができる。
グローバルのコラボレーション事業の戦略-顧客体験の変革を
米国シスコシステムズ シニアバイスプレジデント 兼コラボレーションゼネラルマネージャーのJaved Khan氏からは、2023年のコラボレーション事業の戦略について、説明が行われた。同社は8月から会計年度が開始している。
Khan氏は、「ハイブリットワークはこれまでの働き方と異なり、さまざまな面で難しくなっている」として、シスコは「働き方・ワークスペース改革」「フレキシブルなワークスタイル」「顧客体験」の観点から、ハイブリッドワークの課題を解決すると述べた。
「働き方・ワークスペース改革」に関する取り組みとしては、「Webex Devices」で、Webexに限らず、好きなWeb会議で利用できることが紹介された。上述したように、「Webex Devices」ではMicrosoft Teams, Google Meet and Zoomにワンクリックで参加できる。
「フレキシブルなワークスタイル」に向けては、Web会議デバイスのラインアップを拡充するとともに、リアルタイムでの通訳、複数の言語の通訳の統合、字幕などのアクセシビリティ機能の対応などが行われている。
そして、「顧客体験」に関わる製品が「Webex Contact Center」となる。Khan氏は同製品において「革新性」「クラウドシフト」「GTM戦略」に注力すると説明した。
日本のコラボレーション事業の戦略 - CXで「おもてなし」を提供
日本におけるコラボレーションビジネスの戦略については、シスコシステムズ 執行役員 コラボレーション・アーキテクチャ事業担当 菊池政広氏が説明を行った。
菊池氏は、日本では激化する人材獲得競争、経済のグローバル化、パンデミックの影響でビジネス環境が不確実になっており、そうした中で生き抜くには、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「EX(従業員体験)」「CX(顧客体験)」が必要だと述べた。
従業員がモチベーション高く働くと、CXが実現されることから、菊池氏は「EXとCXには強い因果関係があり、いずれも企業の成長に貢献する。そのため、双方が向上するよいスパイラルを作っていくことが重要。DXとCXの間にEXが必要だと考えている」と説明した。
これまで日本では、DXとEXに取り組んできたことから、今回、CXを高める戦略を発表したという。「DX、EXに続く3本目の柱として、国内でもCXを投入する。具体的には、「Webex Contact Center」と「Webex Connect」により、顧客満足度向上につながる『おもてなし』の提供を支援する。日本人が得意とするおもてなしを提供したい」と、菊池氏はCX支援に向けた意気込みを語っていた。