シスコシステムズ(シスコ)は7月27日、日本独自の要素を取り入れたパートナー制度「エコシステム パートナー プログラム」を開始すると発表した。シスコが提供するネットワーク機器やSaaS製品などを土台としたソリューションの開発を加速させるのが目的。スタートアップ企業をはじめとした、特定領域に注力している企業20社(7月27日時点)と連携する。今後3年間で100を超えるソリューションの共創を計画しているという。
同日開催された記者説明会に登壇した代表執行役員社長の中川いち朗氏は、「顧客とパートナー企業の成功こそがシスコの成功。シスコは、もはやインフラだけを提供する会社ではない。『信頼される製品ベンダー』から一歩踏み込んで、『常に寄り添う戦略的ビジネスパートナー』へと進化しなければならない」と意気込んだ。
新しく開始する同プログラムでは、シスコとパートナー企業が相互にビジネス領域を拡大していくことを一番の目的としている。シスコ製品のAPIを活用してシステム連携したり、シスコが保持するデータを活用したアプリケーションを共同で開発したりする。
同社はすでに、4つのカテゴリー「インテグレーター」「プロバイダー」「デベロッパー」「アドバイザー」と、3つの認定レベル「セレクト」「プレミア」「ゴールド」から構成されるパートナープログラムを、2021年1月に立ち上げている。そして、今回発表した新プログラムでは、シスコが世界で展開するデベロッパー向けのプログラムを日本の市場やインテグレーター、プロバイダー企業に適応させた。
その理由として、「ほとんどの日本の顧客はインテグレーターからシスコ製品を購入してインフラを構築している。つまり、デベロッパーのドメインを軸にビジネスを展開しているシスコとDXの課題を抱える顧客との間に距離が生じてしまっているのが現状だ。だからエコシステムパートナーの力が必要だと考えた」と、専務執行役員 パートナー事業統括の大中裕士氏は説明した。
シスコはすでに、インテグレーターとプロバイダーに関して1000社ほどのパートナーを抱えており、「今回新たに加わったエコシステムパートナーとのかけ数により、新たなビジネスを創出していく」(大中氏)という。
エコシステムパートナーは、シスコのほとんどの製品で公開しているAPIを活用したシステム連携ができるようになる。また、プラットフォームから得られるデータも利活用できる。「例えば、パケットの中でどういう特性のものがどういうふうに運ばれているかというトラフィックフローを確認したり、ネットワークにつながっているセンサーやデバイスから得られるメトリクスを活用したりできるようになる」(大中氏)
エコシステムパートナーとなったBooost tecnologiesとのユースケースを紹介しよう。同社はCO2排出管理プラットフォーム「ENERGY X GREEN」などを提供している。
両社は、サプライチェーンにおけるCO2排出量をリアルタイムに算定するアプリケーションの開発を目指している。工場や設備などのデータをシスコのAPIを経由して取得し、そのデータをリアルタイムに「ENERGY X GREEN」と連携させている。
シスコは、新しいパートナープログラムにおいて、5つのステップ「ベーシック」「プラス」「デベロッパー セレクト」「デベロッパー プレミア」「デベロッパー ゴールド」を用意した。パートナーのケイパビリティや期待したいこと合わせて、どのステップからでも入れるような仕組みにしたという。パートナー特典やパートナー登録条件は各ステップでそれぞれ異なる。
同社は今後3年間で、20社のパートナー企業を100社まで増やすことを目指す。大中氏は、「共に顧客を開拓しそのビジネスが成功したときには、パートナーにインセンティブを支払う。共同開発できる仕組みもしっかりと整えている。パートナーが開発した製品をシスコの取り扱い製品として登録して全世界共通で提供することも可能だ」と説明し、「新たな価値を共創し、共に成長していく」と語った。