シャープは9月27日、電子ペーパー分野大手のE Ink Holdingsと、シャープの子会社であるシャープディスプレイテクノロジー(SDTC)が今後、相互に協力し、E Inkの電子書籍リーダーや電子ノートに利用される電子ペーパーモジュールに、SDTC製IGZOバックプレーンが採用されることを発表した。
IGZOは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、酸素(O)により構成される酸化物半導体で、液晶などのディスプレイを駆動するTFTの材料として用いられている。2012年にシャープがディスプレイ向け材料として量産に成功した酸化物TFTは、高い移動度やトランジスタの低リーク電流により、より小さいトランジスタで同じ電流を供給できることを特徴としており、ディスプレイの高速スイッチングを可能としてきた。
一報のE Inkは10年以上もの間、電子泳動技術への酸化物TFTの活用を検討しており、同技術を用いた電子ペーパー製品の拡大を計画してきており、E InkとSDTCの両社はこの2年にわたって、酸化物TFTの電子ペーパーディスプレイ向けの商用化に向けて取り組んできたという。
E InkのJohnson Lee CEOは今回の協業に対し、「SDTCとの提携は、電子ペーパーの表示性能の向上に向けたE Inkの強い意思を示すものです。SDTCでは、さまざまなタイプのディスプレイや電子回路に酸化物TFTを展開することを目指すとしており、酸化物TFT開発に投資していくことをコミットしています。SDTCとのパートナーシップを楽しみにしています」とコメント。一方のSDTCの王建二代表取締役社長は、「次世代電子ペーパーディスプレイの製品化に向け、E Inkの酸化物TFTのパートナーにSDTCが選ばれたことに興奮しています。SDTCは、酸化物TFTの研究開発において、先駆者かつリーダーであり、酸化物TFTを最初に量産したディスプレイメーカーです。E Inkは電子ペーパーディスプレイの市場リーダーであり、両社協業はごく自然なことです」とコメントしている。
この5年間で、1億3000万台の電子書籍リーダーが世界で利用され、紙の書籍からの置き換わりが進んでおり、中でもカラーコンテンツの電子書籍リーダーへの移行は、環境面で大きなインパクトがあると言われている。
今後、E InkとSDTCは、小売りや交通機関の分野での大型サイネージに向けて、IGZOの適用を検討していくとするほか、シャープグループにおいても、さまざまな電子ペーパー用途でのE Inkとの協業モデルを検討していくとしている。
なお、今回の協業に基づく次世代電子ペーパーは、2022年10月18~21日に幕張メッセで開催される「CEATEC 2022」にて出展が予定されている。