名古屋大学(名大)は9月21日、無機固体「リン化ルテニウム」(RuP)中でルテニウムが3つ直線状につながった分子が形成されることで、金属から絶縁体へ変化することを発見したと発表した。

同成果は、名大大学院 工学研究科の平井大悟郎准教授、同・小島慶太大学院生、同・片山尚幸准教授、東京大学 物性研究所の河村光晶助教、同・浜根大輔技術専門職員、同・廣井善二教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行する機関学術誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。

水素原子は陽子1個と電子1個からなるが、2つの水素原子が近づくと、電子を1個ずつ出し合って、どちらの水素原子もその2個の電子を共有することで、強い化学結合(共有結合)が生み出され、水素分子として安定して存在するようになることが知られている。

ある種の無機固体中では、その水素分子のように2個の電子を取り込んで2個の金属原子の間に強い化学結合を形成するものがあることが知られている。たとえば、無機固体の二酸化バナジウム(VO2)中では、67℃以下になると、規則正しく等間隔に並んでいたバナジウム間に強い化学結合が生じ、水素分子のようなペアが作られ、しかも、その際、もともと物質中を自由に動き回っていた電子が分子に取り込まれるため、急激に電気が流れなくなってしまうという。

こうした固体中で分子が形成されることは古くから知られており、さまざまな物質で観測されてきたものの、そのほとんどが2個の原子が2個の電子によって化学結合を作る、水素分子と似たタイプだったという。

RuPは金属なので室温以上では電流が流れるが、0℃以下まで冷却すると急に電気が流れない絶縁体に変化するという特徴を持つほか、化学置換をしてこの変化を起きにくくしてやると、ちょうど金属から絶縁体への変化が完全になくなる置換量で超伝導になることから、金属から絶縁体へ変化する原因が注目され、これまでいくつかの提案がなされてきたが、決定的な証拠がなく、未解決の問題であったという。

そこで研究チームは今回、その原因解明のため、RuPの高品質試料を合成し、放射光X線回折を用いて結晶構造の変化を詳細に調べることにしたという。その結果、金属から絶縁体に変化する際に金属元素のルテニウムが直線状に3個つながった三つ子の分子を作ることを発見したとする。