9月14日から16日にかけて東京ビッグサイトで開催されている林業の最新技術の展示会「第3回 次世代森林産業展(FORESTRISE 2022)」にてヤマハ発動機は、同社の無人ヘリコプターとLiDAR(Light Detection and Ranging)を組み合わせた「森林計測サービス」を紹介している。
高解像度LiDARで森林を3次元デジタルデータ化
ヤマハ発動機は、1983年から産業用無人ヘリコプターを製造。近年では主に農薬散布などに使用されている。この無人ヘリの安全性能といった長年の実績を活かす形でリリースされたのが無人ヘリコプターによる森林計測サービスだ。
日本の国土の約3分の2を占める森林。森林の計測は、間伐などの手入れのための状況把握などを目的として、自治体や企業によって行われているが、従来の人の手による計測や有人航空計測では、計測範囲が限られ、計測精度が低くなってしまうことが課題だったという。
ヤマハ発動機の森林計測サービスは、最大飛行時間約100分の産業用無人ヘリコプター「FAZER R G2」に高解像度LiDARとカメラを搭載し、1日あたり最大100haの計測が可能だ。
また、LiDARにより1秒間に75万回のレーザを照射することで、さまざまな角度からのデータを獲得し、数千点/m2以上の高密度の点群データを獲得することができる。これにより、1本1本の木の状態がわかるほどの高精度なデータが得られ、樹高や1haあたりの木の本数などを実測値に近い精度で知ることができるという。
高度30m~50mの低空からレーザを照射するため、木だけでなく、地表面の情報を取得でき、森林の地形も把握が可能だという。
ヤマハ発動機は2022年8月23日に、森林計測サービスの顧客向けに、計測解析結果を簡単に見ることができるクラウドサービス「ヤマハモーターフォレストマネジメントシステム(YFMS)」の提供も開始している。
同サービスは、主に森林の資産価値の把握に用いられることが多いとのことで、同サービスの担当者は「国内の森林で木材として主に使われているのは針葉樹だが、広葉樹にも木材として使えるものもある。木材として価値のある広葉樹がどこにどれくらい存在するのかを調査する技術も今後開発していきたいと考えている」と今後の展望について述べた。
また、最近では、カーボンクレジットなどの取り組みに関して、森林の二酸化炭素の吸収量の把握にもニーズがあるという。
森林計測サービスの担当者は「このサービスによって、調査にかかる人の手間が減り、浮いた人手を森林の整備に回すことで、森林を良くするアプローチにつながるのではないかと考えている。カーボンニュートラルの観点でも、樹齢20年くらいの樹木が最も二酸化炭素を吸収し、それ以降は二酸化炭素の吸収量が落ちるため、森林の状況を把握することが重要。森林DXはこれから市場を作っていく段階だと思うので、少しずつ市場を大きくできればと考えている」とした。