日本マイクロソフトは8月30日、従業員エクスペリエンスの支援を目的としたプラットフォーム「Microsoft Viva」の概要と、8月に一般提供を開始した新サービスなどの機能を解説するメディア向けのオンライン説明会を開催した。

  • 「Microsoft Viva」のサービスラインアップ(2022年8月30日時点)

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従業員エクスペリエンス(EX、Employee Experience)とは、働き方やスキルアップ、経済的な満足感、身体的・精神的な健康、目標達成や評価、コミュニケーションなど、企業や組織における従業員が体験すること全般を指す。

コロナ禍でリモートワークや在宅ワークがニューノーマル化し、従業員の働きがい、従業員から見た企業の価値、企業で働くことの意味などが見直されはじめ、企業と従業員の関係が変化しつつある。そうした中で、マイクロソフトは従業員エクスペリエンスの向上につながる機能をMicrosoft Vivaで提供していこうとしている。

日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部長の山崎善寛氏は、「Microsoft Vivaでは、効果的な仕事習慣の確立やビジネスパフォーマンスの向上、組織全体への知識の提供・共有、企業と従業員のエンゲージメント(関係性)の向上、働く中での学習・成長・成功を継続的に支援するものだ」と語った。

  • 日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部長 山崎善寛氏

    日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部長 山崎善寛氏

渋谷区では職員の働き方の可視化に「Viva インサイト」を活用

Microsoft Vivaは、Microsoft TeamsまたはMicrosoft 365にモジュールとして組み込んで利用するほか、単体のソフトウェアスイートとしても利用できる。スイートの利用料金は、1ユーザーあたり月額980円となる(Glint使用の場合は1ユーザーあたり月額1300円)。

これまで、パーソナライズ化したデジタルワークプレースのゲートウェイを提供する「Viva コネクション」、従業員やマネージャー、経営者に対して従業員エクスペリエンスの向上につながる分析情報やインサイトを提供する「Viva インサイト」、企業内のラーニングリソースを集約しコンテンツとして提供できる「Viva ラーニング」、企業内のナレッジ(情報、ノウハウ、専門知識を持つ人材の存在)の共有を支援する「Viva トピック」が提供されてきた。

2022年8月1日からはチームや組織の目標達成を支援する「Viva ゴール」、同年8月24日からは社内SNSを提供する「Viva エンゲージ」の一般提供が開始された。現在は営業担当者の業務支援に特化した機能を提供する「Viva セールス」のパブリックプレビュー中で、2022年10月から同モジュールの一般提供が予定されている。

  • 「Microsoft Viva」の価格とライセンス

    「Microsoft Viva」の価格とライセンス

国内では、渋谷区がViva インサイトを利用して、職員の働き方を可視化する「渋谷区オフィスダッシュボード」を構築した。同区ではMicrosoft 365を利用しており、OutlookやTeamsのデータのほか、外部の業務システムから取得したデータをダッシュボード上で組み合わせて、職員の業務量や負荷を分析しているという。

また、横浜トヨペットでは、経営統合でさまざまな組織バックグランドを持つ社員が働くことになったことをきっかけに、社員の働きがいの可視化を目指して、Viva インサイトを活用している。同モジュールでは、名刺管理システムや1on1ツールなどのサードパーティデータも取得し、分析しているという。

OKRによるビジネスマネジメントをサポートする「Viva ゴール」

説明会ではViva ゴール、Viva エンゲージ、Viva セールスの機能について、日本マイクロソフトの製品担当者が解説した。

Viva ゴールは、OKR(Objectives and Key Results)という、自身のObjective(目標)の達成度合いを、プロジェクトのKey results(主要な成果)で測定するマネジメント手法を実践するにあたって、ユーザーをサポートする機能を提供するモジュールだ。

Viva ゴールではOKRの観点から見た目標やサブ目標、それらに紐づいた主要な成果、成果の達成度合い(ステータス)、担当者、目標達成までの期限などを閲覧できる。ユーザーはMicrosoft Teamsのチャットと同様に、成果達成に向けた業務の進捗確認やレポートを送り合える。

  • 「Viva ゴール」の画面イメージ。目標と主要な成果の管理画面

    「Viva ゴール」の画面イメージ。目標と主要な成果の管理画面

今後はユーザーが利用している他者の業務管理およびデータツールのほか、Microsoft Vivaの他のモジュールやMicrosoft Power BI、Microsoft 365の関連アプリやサービスとの統合を予定している。

日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部プロダクトマーケティングマネージャーの加藤友哉氏は、「Viva ゴールを利用することで、各従業員の業務、企業の目標との関係性、貢献度を把握できる。また、日常業務の流れの中にビジネス目標を組み込み、カスタマイズされたダッシュボードやリンクを使用してOKRと進捗状況を社内全体で共有できる」と述べた。

  • 日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー 加藤友哉氏

    日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部 プロダクトマーケティングマネージャー 加藤友哉氏

Teams上で利用できる企業内SNS「Viva エンゲージ」

Viva エンゲージは、Microsoft Teams上で提供していた「Communities」をリブランディングしたもので、企業内SNSの機能を提供するモジュールだ。Microsoft TeamsのWeb、デスクトップ、モバイルの各バージョンに対応しており、Microsoft 365の法人ライセンスの利用者なら誰でも利用できるようになる予定だ。

なお、同モジュールの使用には「Microsoft Yammer」のライセンスを所有している必要がある。

Viva エンゲージでは、フィード投稿や24時間で投稿内容が消えるストーリーの投稿、ストーリーラインの編集、コミュニティへの参加、企業・組織内のメンバーのフォローや投稿へのリアクションといった、主要な企業内SNS機能を利用できる。

今後は、コミュニティ内の会話や知識の共有をしやすくするように、Viva コネクションやVivaトピックとの連携を予定している。

  • 「Viva エンゲージ」の画面イメージ

    「Viva エンゲージ」の画面イメージ

加藤氏は、「組織全体への知識の提供とエンゲージメント強化を目的としたモジュールとなる。普段から利用しているSNSと同様にカジュアルに投稿を行って、情報収集や仲間づくりの居場所として活用してほしい。また、経営陣と従業員の双方向の対話にも活用できる」とViva エンゲージのコンセプトを説明した。

Microsoft 365などにある顧客データをCRMに連携できる「Viva セールス」

「Viva セールス」は、営業担当者の業務支援のためのモジュールで、Microsoft TeamsとMicrosoft 365からデータを自動的に取得し、任意のCRM(Customer Relationship Management)システムに登録することができる。また、登録したデータを基に顧客との関係性をデータ化して提供するほか、次に行うべきセールス活動をAIが推奨する機能などもある。

日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション本部 プロダクトマーケティングマネージャーのサンタガタ麻美子氏は、「営業担当者の多くはMicrosoft TeamsとMicrosoft 365などの業務システムで1日の大半の仕事をこなしている。それらはCRMのシステムやツールとはつながっていないため、顧客への営業活動に関する情報の入力作業が二重に発生しており、課題となっていた。営業担当者のCRMツールへのデータ入力を削減し、顧客対応に集中してもらうべく、このモジュールが開発された」と明かした。

  • 日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション本部 プロダクトマーケティングマネージャー サンタガタ 麻美子氏

    日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション本部 プロダクトマーケティングマネージャー サンタガタ 麻美子氏

Viva セールスでは、Outlookで初めてメールを受け取った顧客の情報もCRMに連携させることができる。情報連携後は、Outlook上で顧客の所属する企業の情報や、現在の取引状況、これまで提供した資料も確認できる。

顧客とのミーティングをOutlookのカレンダーに登録すれば、その顧客と関係の深い社内の関係者をリストアップして表示し、チャットで連絡したり、顧客情報を受け取ったりすることも可能だ。

Microsoft Teamsで顧客とWebミーティングをしている際にVivaセールスを立ち上げると、会話の自動書き起こしが可能だ。ミーティング終了後には書き起こし内容を基にしたサマリーが自動で作成される。このほか、ミーティング時の音声を基にした顧客のセンチメント分析なども行える。

また、Viva セールスであつかうデータは、Excelファイルにエクスポートして、自由に編集・加工できる。

  • 「Viva セールス」であつかうデータはExcelにエクスポートできる

    「Viva セールス」であつかうデータはExcelにエクスポートできる

現行のパブリックプレビュー版では、OutlookとMicrosoft Teamsへの接続の一部機能、会話インテリジェンス機能のみ提供している。また、接続するCRMは、Dynamics 365 またはSalesforce CRMのみに限られるが、順次、他のCRMもサポートする予定だ。

2022年10月からはグローバルでの一般提供を予定しているが、日本語対応やスタンドアロンのライセンスの金額は未定だ。なお、Dynamics 365 Sales Enterprise版とPremium版のユーザーは、Viva セールスを無償で利用できる。