国立極地研究所(極地研)、東北大学、電気通信大学(電通大)の3者は8月26日、北欧の3地点で観測されたオーロラ画像に、医療診断の分野で多く用いられているコンピュータトモグラフィ(CT)の手法を適用することで、数秒から数十秒で準周期的に脈を打つように点滅する「脈動オーロラ」の3次元構造を復元することに成功したことを発表した。

また、宇宙空間から地球大気中に降り込んでオーロラ発光を引き起こす電子の2次元分布の復元にも成功し、その時空間変動を明らかにしたことも併せて発表された。

同成果は、極地研 宙空圏研究グループの吹澤瑞貴特任研究員、東北大大学院 理学研究科の坂野井健准教授、極地研 宙空圏研究グループの田中良昌特任准教授、同・小川泰信教授、電通大大学院 情報理工学研究科の細川敬祐教授を中心に、北欧3か国の複数の研究機関所属の研究者も参加した、国際共同研究チームによるもの。詳細は、欧州地球科学連合が刊行する太陽地球科学および惑星科学に関する全般を扱う学際的なオープンアクセスジャーナル「Annales Geophysicae」に掲載された。

オーロラは、一般的なカーテン状オーロラであれ、今回の観測対象である脈動オーロラであれ、宇宙空間から地球大気中に降り込んできた電子(降下電子)が、地球大気中の窒素や酸素などの分子と衝突することで発光するという点は、基本的には同じとされている。ただし脈動オーロラの場合は、その発生の最中に成層圏のオゾン破壊に関与するような高エネルギー電子が、地球大気中に降下していることが示唆されている。

これまで、オーロラ発光を引き起こす降下電子は、オーロラ発光領域内や発光領域上空を飛翔するロケットや衛星などを用いて直接観測が行われてきた。しかし、これらは高速で移動しながらの観測のため、取得データの変動が時間変化なのか空間変化なのか区別ができないことが課題だった。また、こうした飛翔体での観測はその軌道上に限られるため、3次元的に広がる脈動オーロラ発光の構造や降下電子の空間分布も明らかにされていなかったという。

そこで研究チームは今回、脈動オーロラの3次元構造と、オーロラ発光を引き起こす降下電子の2次元分布の時空間変動を明らかにするため、複数の方向から撮影した2次元画像から本来の3次元構造を復元する解析手法であるCTの技術を応用することにしたという。