京都産業大学(京産大)は5月21日、彗星研究の根幹を揺るがすような矛盾として知られる含有H2O(水)量の「酸素原子オーロラ輝線幅問題」の解決を図るべく、過去の観測データの詳細な再検証を実施した結果、「H2O分子は、太陽スペクトル中の『ライマン・アルファ輝線』によって光解離される」という考えは、2種類の輝線のうち、赤色については正しいが、緑色については間違っていたことが示され、矛盾が解消されたことを発表した。

  • 彗星の模式図

    彗星の模式図 (C)国立天文台 天文情報センター (出所:京産大Webサイト)

同成果は、京産大 河北秀世 神山天文台長(理学部 教授兼任)らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

彗星に含まれる水(H2O)の量を推定するために利用されているのが、「酸素原子オーロラ輝線」であり、H2Oが太陽スペクトル中の「ライマン・アルファ輝線」を受けて壊れる光解離(ひかりかいり)反応により生じた、(電子的に励起された)エネルギーの高い酸素原子が発する特殊な発光であるとされている。

しかし21世紀に入ってから、酸素原子オーロラ輝線を巡る謎が彗星の研究者たちを悩ませるようになってしまう。同輝線には緑色と赤色があるが、約40年前に発表された研究では、ライマン・アルファ光子によってH2O分子が壊された際に生じた酸素原子が得る余剰エネルギーは、赤色よりも緑色の方が輝線の波長幅は狭くなるはずとされ、それを理由として、赤色輝線が長く利用されてきたのだが、21世紀に入って、真逆の緑色輝線の方が幅広いことを示す観測結果が次々と得られるようになってきたという。

つまり、これまでの彗星研究の根底を揺るがすような矛盾が生じてしまったことになる。そこで河北台長は、この問題を解決すべく、過去の観測データについての詳細な再検証を行うことにしたという。