また、接着にもPDMSが用いられ、その塗布量の最適化によって、微小スペースのアレイを接合部に形成させることに成功したとする。この接合構造は、皮膚貼付時の変位に追従する柔軟性と強度を有している点が特徴で、微小スペースの面積は約0.4mm2、200個/cm2程度の密度で配列されており、電極面積1cm2当たりのスペース体積は~10マイクロリットルと見積もられたという。PDMS薄膜はパッチ内部からの水分蒸発を防止し、指に巻いた状態で、3時間以上安定に発電が続くようになったという。

  • ウォータープルーフ仕様のバイオ発電パッチ使用時の様子

    (上)ウォータープルーフ仕様のバイオ発電パッチ使用時の様子。O2還元カソードに形成した微小スペースから供給されるO2を使って水中でも発電が維持される。(左下)糖とO2から発電するオール有機物の経皮通電パッチBIPP(サンアローと共同開発)。(右下)その発電メカニズムの模式図 (出所:東北大プレスリリースPDF)

一方、微小スペースは、カソード電極へO2を供給するタンクとして働くことが期待された。実験では、カソードを水に浸して、ヒトの皮膚が痛みを感じない最大の電流(0.5mA/cm2)を流したときの電極電位の経時変化が測定。PDMS薄膜がないカソードでは、水に入れると三相界面の崩壊による性能低下(電位低下)が発生したが、ウォータープルーフ仕様のカソードでは、約200秒間0.5V付近の電位が維持され、従来より10倍ほど長く発電を維持できることが確認されたとする。

  • カソードの断面写真

    (a)走査電子顕微鏡によるウォータープルーフ仕様O2還元カソードの断面写真。(b)水中での電極電位の経時変化(0.5mA/cm2のときのO2タンクの持続時間)を、PDMS薄膜がない場合(黒線)とウォータープルーフ仕様のカソード(青線)で測定された ((出所:東北大プレスリリースPDF)

パッチ使用時の電流値は数十μA程度の場合が多く、その際には発電の維持時間が1時間を超えることが予想されるという。実験では、電極電位0.5Vで測定したO2還元電流値の測定が行われ、水中で低下した電流値が、水から取り出した数十秒後にはPDMS薄膜を通したO2の再充填によって0.7mA/cm2程度に回復することが確かめられたほか、O2再充填は連続して繰り返し行えることも示されたとしている。

  • ウォータープルーフ仕様カソード

    (c)ウォータープルーフ仕様カソードの電極電位0.5VにおけるO2還元電流値が、水から出し入れを繰り返して測定された(O2タンクの消費と再充填) (出所:東北大プレスリリースPDF)

なお、研究チームでは、今回の成果を踏まえた新構造のO2カソードを実装することで、傷の治癒促進や鎮痛および薬剤浸透(美容・医療)に効果を有するバイオ発電パッチが、水仕事や入浴の最中にも継続して使用可能になるとするほか、口腔内や体内で利用するバイオ発電デバイスの開発にもつながることが期待されるとしている。