OKIとKRYSTALは8月17日、圧電単結晶薄膜とSOIウェハの接合技術を確立し、超音波センサなど圧電MEMSデバイスの性能を向上させる「圧電単結晶薄膜接合ウェハ」の試作に成功したと発表した。試作品として超音波センサへ適用され、従来の多結晶薄膜を用いたセンサと比較して、感度を20倍に向上させることができたとしている。
圧電MEMSデバイスは、物体検知を行う超音波センサ、小型マイクやスピーカー、通信用途の高周波フィルターなどとして、自動車、ロボット、ウェアラブル端末、IoT、スマートフォン、通信基地局など多くの市場で使われている。ニーズが拡大しており、さらなる小型化と低消費電力化が求められているため、素材レベルでの基本特性の向上が課題となっているという。
圧電MEMSデバイスの基本特性を決める圧電薄膜は、「単結晶」化により、あらゆる特性が向上することが知られているが、単結晶薄膜をウェハ上に形成するためには特殊なバッファー層が必要で、実現可能なデバイス構造が限定されていた。そのため、特性が劣るものの製造が容易な「多結晶」薄膜が一般に用いられている。
KRYSTALは、「単結晶が未来を創る」というコンセプトのもと、MEMS用の素材開発を行い、その素材として汎用されているジルコン酸チタン酸鉛(PZT)の単結晶化に世界で初めて成功。単結晶をベースとしたさまざまな素材開発を行っている。
今回発表した技術では、KRYSTALが単結晶化に成功した、PZT単結晶薄膜を用いることで、圧電MEMSデバイス性能を向上させることに成功。
加えてOKIが、そのPZT単結晶薄膜の性能を損なうことなく、バッファー層から剥離しSOIウェハに直接接合する技術を確立した。接合技術には同社のLEDプリンタ事業で培った、異なる素材の基板に分子間力接合する独自技術「CFB技術」を適用したという。同技術により、デバイス構造が限定されることが課題だった単結晶薄膜を、さまざまなデバイスに接合することが可能となる。
また、今回の試作は超音波センサだったが、マイクやスピーカー、ジャイロセンサなど圧電MEMSデバイスが用いられるさまざまな製品の感度向上にも貢献できる可能性があるという。
両社は、2022年11月をめどに圧電MEMSデバイスメーカーをターゲットにサンプル出荷を開始し、2023年にウェハの提供を開始し、同年中に100億円の売り上げを目指すとしている。